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生きる力を身につける術『西の魔女が死んだ』

西の魔女が死んだ
『西の魔女が死んだ』
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魔女といっても、三角帽子で忌々しい笑みを浮かべたあの魔女のことではない。どちらかというと老賢者だ。自然のサインを読みとり、植物の知識を使って人を癒し、周りから慕われる人である。

「西の魔女が死んだ」は1994年に出版された梨木香歩の代表作であり、2008年に実写映画化された。恐らく小学校高学年から中学生に向けたYA(ヤングアダルト)小説だと思うが、大人にこそダイレクトに響く作品だと思う。

中学に進んでまもなく、学校へ足が向かなくなった少女まいが主人公だ。季節は春から初夏へと移り変る頃、<西の魔女>ことママのママ、大好きなおばあちゃんから、魔女の手ほどきを受ける。庭のハーブを摘んでサンドイッチやハーブティーにしたり、洗ったシーツをラベンダーの茂みに干して香りを移したり、ワイルドストロベリーでジャムを作ったり...。という素敵な演出が続くが、決して、丁寧な暮らしを押し付けようという思惑はない。

「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」_魔女が教えてくれるのは、自分で自分の生き方を選択するという術なのである。

(文/峰典子)

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