もやもやレビュー

『パレードへようこそ』を観て、人生の手本にしたいとおもった。

パレードへようこそ [DVD]
『パレードへようこそ [DVD]』
ビル・ナイ,イメルダ・スタウントン,アンドリュー・スコット,ジョージ・マッケイ,ベン・シュネッツァー,マシュー・ウォーチャス
KADOKAWA / 角川書店
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 ここ最近LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)に対する社会の取り組みが取り上げられています。渋谷区では同性カップルを認め、結婚に準ずる関係を認める条例を成立させました。

 本作は、2014年カンヌ国際映画祭でのクィア・パルム賞受賞を皮切りに、ゴールデン・グローブ賞作品賞を受賞した実話に基づく物語です。

 1984年、イギリスでは炭鉱労働者たちが20か所の炭鉱閉鎖案に抗議するストライキをしていました。それをニュースで知ったゲイのマーク(ベン・シュネッツァー)は、炭鉱労働者とその家族を支援するために、仲間たちと募金活動を始めます。ゲイの権利を訴える大きなパレードで行進しながら募金を呼びかけました。そして、LGSM(炭鉱夫支援レズビアン&ゲイ会)を立ち上げ(とは言え、当初参加者は9人でした)、ウェールズの炭鉱町ディライス炭鉱に多額の寄付をします。

 ディライス炭鉱に勤務していたダイ(パティ・コンシダイン)が、偏見差別を受けていたLGSMのメンバーらゲイやレズビアンの仲間たちに送った言葉が印象的です。
「皆さんがくれたのはお金ではなく友情です」と。

 その後、LGSMはウェールズに招待され、当初は彼らに偏見を持っていた街の人々も、彼らと交流を持つうちに、同じ人間として互いの理解を深めていきます。

 一度は偏見を捨てきれなかった人に裏切られ、LGSMは受け入れを拒否されることになりましたが、心ある行動は心ある人々にきちんと届いていました。一年後、思いがけない形で返ってきたのでした。

 ロンドンでのゲイのパレードに各地の炭鉱の団体が駆けつけてくれたのです。それだけでなく、1986年の労働党大会でゲイの人権が認められることになったのですが、後押ししてくれたのは全国の炭鉱労働者団体でした。

 見返りを求めることなく、人の力になりたいという純粋な思いがきっかけとなり、差別に遭っていた自身の生き方までも肯定される......。日々の生活の中で困っている誰かのために手を差し伸べてみよう。小さなことからでも実践したくなる、人生の手本にしたい本作です。

(文/森山梓)

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