もやもやレビュー

アゲマンについて学ぼう!『ワンチャンス』

ワン チャンス [DVD]
『ワン チャンス [DVD]』
ジェームズ・コーデン,アレクサンドラ・ローチ,ジュリー・ウォルターズ,コルム・ミーニイ,ジェミマ・ルーパー,マッケンジー・クルック,ヴァレリア・ビレロ,デヴィッド・フランケル
ギャガ
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

 ノーベル賞は日本人が2人も受賞し、話題になった昨年のノーベル賞。寄生虫薬イベルメクチンで多くの人を救った大村智さんが、「幸運は志を好む」と言っておられた記事がありました。

 本作には、志を持ち幸運を掴んだ男性の実話が描かれています。
 主人公のポール・ポッツは皆からいじめられるさえない少年でしたが、昔から歌だけは誰にも負けないくらい好きで夢はオペラ歌手になることでした。しかし大人になって就いた職業は携帯販売員。オペラとは程遠いものでした。

 ところが、彼女(ジュルズ)と出会ったことでポールの人生が変わり始めます。諦めていた留学も彼女に背中を押してもらってヴェネツィアまで行くことができました。彼女との結婚後は、甲状腺に腫瘍が見つかったり交通事故にあったりと不遇な状況もありましたが、そんな時、精神的にも金銭面でも支えてもらったり。そして、歌を諦め、再び携帯ショップで働き始めた時に見つけたイギリスのオーディション番組に応募したのも、彼女の後押しがあったからでした。

 そうです。ジュルズと出会ったことで、ポール・ポッツは見事オーディションで優勝を果たし、プロのオペラ歌手になることができたのです。

 印象的だったのは、オーディションの舞台袖で緊張しガチガチになっていた彼の元に、妻ジュルズからの励ましのメールが届いたシーン。留学中、憧れだったパヴァロッティの前で歌うも、パヴァロッティから「一生オペラ歌手にはなれない」と酷評された経験がトラウマになっていた彼を、ジュルズは「パヴァロッティはバカよ」と励まし、ポールの緊張をとってあげます。また、幾度となく訪れる試練にも、くじけることなく夫を支え続けたジュルズはいつも「何事も一歩ずつよ」と前向きでした。

 ポールが夢を実現できたのは、天性の才能があったことはもちろんですが、、自分のことを理解し信じ、いつも支えてくれた妻という最強の味方を得たからではないでしょうか。その意味でいえば、ポールの「幸運」とは、ジュルズと出会えたことなのかもしれません。俗にいうアゲマンのお手本がここにありました。アゲマンとは、励まし上手だったのです。アゲマンを目指している人、誰かの支えになりたいという人は必見です。

 ちなみに、実際の歌声はご本人だとか。その美声にしびれることも間違いなしです!

(文/森山梓)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム