"日本流"が息づいているのに日本人として余り嬉しい気持ちにならない珍作『キングスパイダー』シリーズ
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知る人ぞ知る超低予算ビデオ映画の帝王「ジェフ・リロイ」。トロマ(毒々モンスター等)チックなエログロ映像表現とミニチュア特撮にこだわりを持つ監督さんで、低予算を物ともしない豪腕過ぎる作風が特徴。
今回お題にする『キングスパイダー』(2004)および続編『キングスパイダー VS メカデストラクター』(2005)は、色んな意味で視聴難易度の高いリロイ作品の中でも、日本の特撮の影響を強く伺わせるおかげで、どうにかキャッチーなシリーズです。
1作目は、軍兵器実験所から脱走したクモが次々と人々を襲っては増殖し、パカーンビチャアとなるホラーパートと、何故か巨大化したクモとハイテク戦車で闘う兵士たちの怪獣特撮風パートに分かれていますが、導入やオチも含めて『バ○リアン』風。
続編の方はストーリーや構成も引き継ぎつつ、特撮パートは巨大クモと(これがもう絶望的にショボイ)巨大メカ「メカデストラクター」の対決が中心というウル○ラマンや戦隊物のノリで大幅パワーアップ。勢い任せ感がさらに悪化しています。
質はともかくとして、本シリーズの「日本の特撮の影響」という点は、ジャパニーズスタイルを取り入れて90年代の米プロレス界の寵児となった「ECW」が浮かぶところ。
90年代前半の日本プロレス界では、「新日本プロレス」のジュニアヘビー級戦線(100kg以下)を中核に、日本初のルチャ・リブレ団体「ユニバーサル・プロレス」出身者による華麗な飛び技に加え、休みなく動き回るハイスパートなスタイルが一大ブームに。
さらに別の潮流として、大仁田厚率いる「FMW」や「W☆ING」などのインディシーンで進化した通常の枠組みを超えたデスマッチスタイル(詳しくは後述)が勃興。
「ECW」はこれらの"日本流"を経験した選手を多く取り込んだことで「ハードコア・レスリング」として独自発展したのでした。
細かく喩えると、血なまぐさいリロイ作品はデスマッチスタイル系。一目で低予算と分かるショボ過ぎて採用しないようなアイデアを勢いに任せて押し通す辺りもまさにそれ。
多彩なギミックレスラーに加え、武器(鎖鎌、蛍光灯、画鋲、マネキンの頭など)やらリング周り(有刺鉄線、電流爆破、テーブル、客席バルコニーからダイブなど)など、アイデア勝負だった90年代日米デスマッチシーンに重なってきます。
ただまあ冷静になってみると、日本の特撮の影響がおかしなリビドーで息づいているせいか、日本人としては「アハハナニコレ、ガ、ガンバッテルナァ・・・」みたいな感覚になるのがアレなんですけれどもね。
さて、我が道を行くリロイ先生ですが、今年2013年秋、日本での進撃のなんとかブームを知ってか知らずか、巨人になった(布面積の少ない)オネーチャンが暴れまくるという最新作『Giantess Attack!』の制作費をクラウドファンディング「Kickstarter」で募集し、目標額を超える5,000ドルを獲得(※)。年内リリース(米国内)に向けて鋭意制作中とのことなので、リロイ信者は全裸待機必至ですね!
(文/シングウヤスアキ)
※『Giantess Attack!』
「Kickstarter」でティーザー映像やプロジェクト紹介映像が確認出来ます。スゴくアレです。目標が4,000ドルという額面からして、恐らく足りない資金を一部募ったのではないかと思われます。まさか総製作費40万円なんてことはあるワケがないですよね・・・。