プロレスラーキャストの"扱い方"の王道が味わえる『ユニバーサル・ソルジャー:ザ・リターン』
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主演ではないけど「プロレスラーが重要な役で出演している(ポンコツ)映画」としてご紹介したいのが、『ユニバーサル・ソルジャー:ザ・リターン』(1999)。
ジャン=クロード・ヴァン・ダムとドルフ・ラングレンという当時の若手人気アクションスターの競演や、ローランド・エメリッヒ監督の初大手スタジオ作としても知られる『ユニバーサル・ソルジャー』から7年後、ヴァン・ダムのみ復帰して製作されたのが本作です。
ベトナム戦争で戦死しながらも強化兵士として蘇り、ライバル兵士との死闘の末、故郷に戻った主人公リュック(ヴァン・ダム)は、初代ユニソルとして軍の新世代ユニソル開発に協力する立場になっています。
が、蘇生人間の身体的制約や自身が忌むべき存在と苦悩する描写があった1作目に対し、本作では肉体的制約は謎治療で完治している上、ちゃっかり娘まで持つ(嫁は死んでるけど)ただの幸せパパになっており、設定崩壊も甚だしい事態に。
ともあれ、新世代ユニソルを一元統括する人工知能プログラム「S.E.T.H」が自我を持ち、配下のユニソルを操り一斉蜂起。緊急時のプログラム消滅を止める解除コードを唯一知るリュックを追い詰める流れとなります。
そして新世代ユニソルのリーダー格ロメロ(※)として登場するのがWCW、WWEで活躍したビル・ゴールドバーグ(通称ゴーバー)。本コラムでも何度か登場しているゴーバーさんは、アメフト出身のパワーファイターとしてWCW在籍時に通算176連勝も記録するなど"無敵の怪物"イメージで売っていた選手です。
ヴァン・ダム先生のライバルとして幾度も対峙するゴーバーさんですが、破竹の連勝どころか、立ち塞がってはやり込められる連敗地獄! しかも現在WWEでトップ・ジョバーとして君臨する「3MB」ばりの失笑を誘うようなコミカルなヤラレっぷりですよ。
しかし、さすが正統派の珍作。プロレス技をしっかり採用しており、ゴーバーさんはシュミット式バックブリーカーや得意技のスピアー(タックル)を披露。ちなみに被害者は病院内の医療スタッフがなんですが、レスラーかその類にしか見えないマッチョな方々で、しかも何故か自らゴーバーさんに殴りかかるというプロレス的演出。
いやはや、なんとも映画におけるプロレス出身キャストのセオリー(要は「でくの坊」感)を忠実に守った扱いです。
1作目同様8割肉弾戦、残りは銃撃戦、最後は爆破で決着という不滅の珍作テンプレ振り。この83分間、寝た方がマシだったという気分にさせてくれることでしょう。
そんなショッパイ内容だったせいか、TV映画版2作同様、本作はシリーズの黒歴史として「なかったことに」なっているようで、ラングレンも復帰した『ユニバーサル・ソルジャー リジェネレーション』(2009)が正統続編として製作され、さらに『ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録』(2012)が現時点の最新作として続いています。
(文/シングウヤスアキ)
※:当初予定されていたロメロ役はゴーバーさんではなく、スティーブ・オースチンだったそうな。2人共ツルピカひげオヤジという風貌が共通していますが、身体の大きいゴーバーさんの方がでくの坊感が出るので正解だったかも?