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プロレス×映画

やり過ぎな"お膳立て"でスピリチュアル・セガール拳が唸る怪作『沈黙の聖戦』

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 往年のプロレスラーの中には、ベテランの域を超えた「レジェンド」としてファンや関係者に敬われる選手が存在しますが、年齢や体調が衰えようと、定番の技やジェスチャーなど「お約束」の絶対要求度は高留まりしたままになります(アントニオ猪木の張り手や1・2・3ダー)。
 当然、レジェンドが出るような試合ともなれば、対戦相手や関係者は「お約束」を成立させるための"お膳立て=演出"に気を配らなければならないワケですが、その"サジ加減"についてプロレスで喩えてみたいのが、今回のお題『沈黙の聖戦』(2004)。

 言わずもがなのスティーヴン・セガール大先生主演作ですが、セガール作品の中でも演出の"サジ加減"の怪しさで一、二を争う本作。
 元CIAエージェントのジェイク(セガール大先生)は、タイを旅行中に現地テロリストに拉致された愛娘とその友達である米上院議員の娘の救出のため、単身現地に乗り込み、かつての相棒と共に独自行動を開始するのだが・・・という流れで、「東南アジアが舞台」「身内が誘拐」「敵はテロリスト?」「米政府が関わる陰謀」など、B級アクションのキーワードを全て引っ詰めたような内容。

 それだけ聞くと、ああいつものセガール作品か、と早合点してしまうところですが、本作は『少林サッカー』での武術監督など、香港映画が誇るワイヤーアクションで名の知れたチン・シントンが監督を務めているため、随所でおかしな事態になっているのです!

 重厚なアクションが身上のセガール大先生ですが、本作では相手の技を高速でさばきまくり、ひとたび打突を加えれば、そこらの瓦礫を突き抜けて吹っ飛びます。
 通常のセガール拳が、晩年のジャイアント馬場の16文キックにヤラれる側が問答無用に吸い込まれて行くあのスローモーな感覚だとすれば、本作の場合は、過剰なバンプ(受け身)に定評のあった全盛期のザ・ロックが、スティーブ・オースチンの必殺技「スタナー」を食らった際、ハリキリ過ぎて縦にキリモミしてマットを転がった、あの伝説級バンプの感覚でしょう。

 そして物語は、シントン監督の出世作『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』シリーズなどで得意としたスピリチュアルかつファンタジーな領域へと突入し、セガール大先生はもはや超人へと進化。
 黒幕の放った弓矢を拳銃で撃ち落とし、刀でも真っ二つ。黒幕の槍攻撃なんて脅威の跳躍力で回避や! 完全に吹き替え(別人)だったけど!

 さらに、敵の魔導師の呪術で金縛りになる大先生のため、タイ僧侶たちがスピリチュアルパワーを送り、魔導師の力を弱めて大逆転を演出。
 これはアレです。"超人"ハルク・ホーガンが50代に差し掛かり、足腰ガタガタでまともに動けなかった2000年代前半、ファンの声援で"ハルク・アップ(やる気チャージのジェスチャー)"して、あっさり大逆転しちゃってた頃のあの圧倒的出来レース感!

 唐突に始まる大先生の現地美女とのお愉しみタイムや、タイらしいニューハーフなムエタイ戦士も登場とお約束をしっかり押さえた本作。普段とは違うセガール拳が味わいたいならオススメの逸品でございます。

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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