映画『バイロケーション』2014年1月18日(土)より角川シネマ新宿ほか全国公開!
2004年の監督デビュー作『独立少女紅蓮隊』では、"女タランティーノ"の登場と言われ、その後も『リアル鬼ごっこ』シリーズや『呪怨 黒い少女』など、ホラー映画やアクション映画などのいわゆる「ジャンル・ムービー」界で活躍する女流監督、安里麻里監督。このたび、監督・脚本を務めたサスペンス・ホラー映画『バイロケーション』の公開を前にして、下北沢の書店「B&B」にて、プロデューサーの小林剛さんと共にトークショーを敢行。作品の裏話、そして好きなホラー映画(タイトルで既にネタバレしてますが)を披露してくださいました!
世界中で実在報告されている超常現象「バイロケーション」が題材
というかその前に! バイロケーション(同時両所存在)という言葉。実はこれ、作品タイトルであると同時に、世界中で実在報告がなされている超常現象を指す言葉でもあります。自分の近くにもう一人の自分が発生するというこの現象。ドッペルゲンガーに近いものがありますが、小林プロデューサー曰く「ドッペルゲンガーとちょっと違うのは、ただいるだけでなくて、もう一人の自分も普通に個性を持って人生を歩み始めてしまう。割と積極的な分身なんです」とのこと。
映画で描かれるのは、本人と同じ容姿を持ちながらもまったく別の人格を持つバイロケーション(通称バイロケ)によって人生を狂わされてしまう人々。安里監督はこんな風に語ります。「もう一人の自分と殺し合うというのは、ホラーではよくあるネタですが、原作を読んで魅力に感じたのは、殺し合うだけで終わっていないこと。もう一人の自分と対峙することで初めて自分が見えてきたり、人生が浮き彫りになりすらする。もしかしたらあっち側(バイロケ)が本当の自分でもおかしくなかったかも知れないと、そこまで突きつけられる作品だったんです。これは面白い映画になると思いましたね」。
小林プロデューサーが安里監督に監督・脚本を依頼したのも、まさにそのテーマをきちんと作り上げたかったから。「映画では水川あさみさんが演じている主人公は、20代が終わらんとする人生の岐路に立った女性。そういう女性を主人公に、なおかつサスペンスで、当然ホラーの要素も入れて。そういういろんなものをまとめ上げられる監督はなかなか思い当たりません。安里監督はそういったジャンルにも長けており、なおかつ女性の人生を一緒にいろいろ話し合いながら作り上げられるんじゃないかと。それでお願いしたんです」
別エンディングバージョンを同時期に公開という異例の試み
また、本作が特異なのは、表と裏、2つの違うエンディングを同時期に公開するという反則級の技を実現してしまったこと。例えばハリウッドでは、いくつかのエンディングを作っておいて公開前のマーケティングで反応がよかったバージョンを採用するなどの方法がよく 取られているそうですが、『バイロケーション』はエンディングの違う2本を両方とも公開する、ガチのマルチエンディングスタイルなのです。
「せっかく人間が2つに分かれる映画なので、映画も2つに分かれちゃいました! 『バイロケーション』という映画にもバイロケーションができた! ということができたら、面白いんじゃないかなと思ったんです。普通ならどっちがホントなんだよ!っていうことになりますし、反則だとは思うんですが、この映画なら許されるのではないかと。とはいえ、脚本・監督の安里監督が乗ってくれなければできませんから。監督に乗ってもらって初めて成立したなと思います」(小林プロデューサー)
「もちろん仕掛けとしての要素もあります。でも、脚本作りをしていてオチとして魅力的なネタが2つあって、本当は両方作りたいという気持ちが腹の中にはあったんです。もう一人の自分が分裂する映画で、映画自体も分裂するというのは面白い、すごくいい企画だなと思いましたね。ただ、2本作ってそれを劇場で公開するというのは、けっこうハードルが高いので、本当にできるのか?とは思っていました」(安里監督)
結果的には、様々なハードルを乗り越えて2バージョンの公開が実現。「観た後の印象は大きく違うと思います。両方観てどっちが好きかを友達と話し合うのも楽しいと思います。二部構成というのはあるけど、現場の時点から明らかに意識して2タイプ撮るというのは今までなかった試み。これはちょっと面白いなと思いますね」と自信を見せる小林プロデューサー。ちなみに表は1月18日〜、裏は2月1日〜です。せっかく観るならやっぱり両方!ですかね。
超映画マニアなおふたりの、好きなホラー映画とは?
というわけで、なんかもう締めに入りそうな勢いですが、最後にお二人の好きなホラー映画をご紹介したいと思います。ちなみに安里監督も小林プロデューサーも熱烈な映画マニア。さらに小林プロデューサーは、角川映画のホラー担当であり「人体損壊描写が好き」と言う秘宝的嗜好の持ち主でもあります。ではどうぞ!
「好きな作品はいっぱいあるんですが、本気で怖いなと思うのは『悪魔のいけにえ』ですね。映画史上、狙って撮れる映画じゃない、奇跡的な映画というのがたまにあると思うんですが、『悪魔のいけにえ』は本当にヤバいものが写っちゃった感じがあって、いつ観ても怖い。16ミリ独特のザラザラ感も含め。なんでしょう、あの生々しさ。あのシャウト加減。ずーっと叫んでるあの感じとか、ヤバいですよね。レザーフェイスも意味不明ですし。大好きです」(安里監督)
「人体損壊映画を一位には挙げません(笑)。映画の中でやるのはとってもファンタジーな感じがして好きなんですが。一番好きなのは『シャイニング』ですね。どうしてもあれは怖いなと、いつも思いますね。すべてに隙がない。怖い映画のお手本じゃないかと思っています」(小林プロデューサー)
最後にひとつ。本作には『半沢直樹』の近藤役で大ブレイクした滝藤賢一さんが、「左遷された刑事」という近藤を彷彿させる役で出演しています。しかも役柄が似ているのはまったくの偶然! 『バイロケーション』の撮影は半沢直樹の放送が始まる以前に行われており、監督もプロデューサーも半沢直樹での役柄は全く知らなかったそう。ただ、当時バイロケと半沢の撮影を掛け持ちしていた滝藤さんは「俺、あっちでも左遷される役なんだよな......」とつぶやいていたそう。再び左遷される滝藤さんを観たい方も、ぜひ劇場へどうぞ〜。
(文/根本美保子)
2014年1月18日(土)より「表」、2月1日(土)より「裏」が、角川シネマ新宿ほか全国公開!
監督:安里麻里
出演:水川あさみ、千賀健永、高田翔ほか
配給:KADOKAWA
http://www.bairoke.jp
©2014「バイロケーション」製作委員会