インタビュー
映画が好きです。

VOL.50 瀬々敬久監督

「未来への希望を感じてもらいたい」…映画『楽園』瀬々敬久監督インタビュー

10月18日(金)に公開されたばかりの映画『楽園』。『悪人』などで知られる吉田修一の短編集「犯罪小説集」の一部を、『64-ロクヨン-』シリーズの瀬々敬久監督が映画化。主演は綾野剛と杉咲花。その他、佐藤浩市や柄本明、村上虹郎など豪華俳優陣が集結し、衝撃的な作品を生み出しています。今回は、瀬々敬久監督にインタビューを決行。原作にはなかった杉咲演じる紡(つむぎ)というキャラクターが生まれたキッカケや好きな映画についてもお伺いしてきました。


――原作にはない、杉咲花さん演じる紡というキャラクターを作るにあたっての経緯をお聞かせください

瀬々敬久監督(以下、省略):原作の「青田Y字路」と、「万屋善次郎」の物語を1本にしようしたんですが、その2つを"つなぐ"人が必要だなって思ったんです。そこで、「青田Y字路」に少しだけ登場した少女を「紡」というキャラクターにして、結びつけることにしました。本作の(佐藤)浩市さんが演じている田中善次郎という役や、柄本さんの藤木五郎という役は、大切な人に残されてしまった人。その人たちの苦悩を代弁するのに紡という少女を作り出しました。紡を中心に描けば、彼女が事件のトラウマから脱出していくことで、物語の帰結のようなものになると思いましたね。


――夏祭りのシーンの「火祭り」は、監督が数年前から撮影したいと思っていた「天狗の舞い」を徹底的に再現したそうですが、もともと「天狗のまつり」を知ったキッカケと、撮影したいという願望が生まれたキッカケをお聞かせください

火祭りにすごく興味があって、10年くらい前に、いろいろ調べてその祭りを見に行ったんです。かなり印象的で、いつか映画にしたいという思いがずっとありました。祭りを見に行ったときに、限界集落も探したりしてたんですよ。本作ができる前から、あの土地と祭りに惹かれていました。天狗は、猿田彦の化身で天孫降臨の神話ではニニギノミコトの水先案内人としてたち振る舞っていたと言われていて。火を振りかざすのと同時に、しめ縄も刀で切り落としていくのですね。「結界を切って先へ進む」ということが、本作の内容に近いのではないかと思いました。


――本作は、綾野剛さん演じる豪士(たけし)の母が思いっきり殴られるシーンから始まり、そのほかにも佐藤浩市さん演じる善次郎が土を食べるシーンなど、衝撃的なシーンがたくさんありました。本作を撮影するにあたって、一番困難だったシーンはありますか

大変だったのは、人間が燃えるシーンですね(笑)。あれは大変でした。熱いし、よく燃えるものを塗布して燃やすのですが、8秒くらいしか持たなくて。引きとかいろんな角度で撮影したので、4回くらい人を燃やしましたね。


――ここからは瀬々監督の映画体験をお聞かせいただきたいと思います。監督の好きな映画はなんですか?

僕が高校生のころ観た映画で、『青春の殺人者』という水谷豊さん、原田美枝子さん主演の長谷川和彦監督作品です。これも実際にあった事件を基に映画化しているんです。観た時は、すごくショックで今でも強烈に焼き付いてますね。実際の事件がモチーフというのが自分の中で大きかった。自分が犯罪を描こうと思ったキッカケになった作品でもありますね。監督を目指すキッカケでもあります。


――瀬々監督ならではの映画の楽しみ方はありますか?

自分ならではのルールはないんですけど、やっぱり映画館に行くのは楽しいですよね。最近はシネコンで見たりするんですが。シネコンはシネコンならではの楽しみ方があって、単館系もそれぞれに特色があって、それを楽しめるじゃないですか。シネコンは巨大なスクリーンで、いろんな人が集まっている。一方、単館系は、グループ分けされた共通の認識がある"ファン"の集いみたいになっていて。家で映画を観るよりは映画館という場所そのものを楽しみながら観るのが、気持ちがいいですね。学生時代、映画館でバイトしていたんですが、映画館の記憶っていうのはありますよね。「あの映画館であの作品を観たな」っていう記憶はずっと残ってますし、場所込みでの記憶ですから。これからも映画館で映画を観ていきたいと思います。


――映画館で観てよかった!と思えた作品はありますか?

僕らが若い頃は、オールナイト上映とかあったんですよ。『仁義なき戦い』5本立てとかあって。週末は映画館をはしごして5本くらいみて、そのまま違う映画館でオールナイトで5本観るような生活をしていたときもありました。若い頃は「年間何百本観るんだ」って意気込んでいた時期もあったんです。そういう狂ったように映画館に行くっていう時期は、誰にでもあるような気がしていて。青春のような、自分の思い出の中にいつもありますね。


――最後に本作ならではの楽しみ方やメッセージがあればお願いいたします。

『楽園』は犯罪を扱った映画ですが、今どうやって生きたらいいのかという状況の中で杉咲さん演じる紡に希望を託し、微かな希望を描いている映画です。その希望を感じていただけたらと思います。


瀬々敬久監督、ありがとうございました!

(取材・文・写真/トキエス)

***

新メイン 190903_RE_p ubcut_no4_02.jpg

『楽園』
10月18日(金)より全国ロードショー

監督・脚本:瀬々敬久
原作:吉田修一「犯罪小説集」(角川文庫刊)
出演:綾野剛、杉咲花、村上虹郎 ほか
配給:KADOKAWA

2019/日本映画/129分
公式サイト:https://rakuen-movie.jp
(c)2019「楽園」製作委員会

« 前の記事「映画が好きです。」記事一覧次の記事 »

瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)

1960年、大分県生まれ。89年『課外授業 暴行』で監督デビュー。『ヘヴンズ ストーリー』(10)で第61回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞、NETPAC賞の二冠を獲得。『アントキノイノチ』(11)では第35回モントリオール世界映画祭でイノベーションアワードを、『64 -ロクヨン- 前編』(16)では第40回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。『最低。』(17)では第30回東京国際映画祭コンペティション部門に出品。その他映画監督作品に、『MOON CHILD』(03)、『感染列島』(09)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(15)、『64 -ロクヨン- 後編』(16)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)、『友罪』 『菊とギロチン』(18)、『糸』(20)など。

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム