1978年の連載開始から40年以上も愛され続けているギャグ漫画「パタリロ!」。2016年に2.5次元ミュージカル化され、大きな話題を呼びました。それから3年、今度は「パタリロ!」が映画館に降臨! 舞台のアナログ感に、映画のVFX効果などが加わった斬新な作品に仕上がっています。今回は、舞台版に続いて主人公パタリロを演じた加藤諒さんにお話を伺ってきました!
ーー幅広い世代にファンがいる「パタリロ!」ですが、パタリロ役が決まったとき、プレッシャーは感じましたか?
それこそ僕の周りでも「パタリロ!」が大好きな方がたくさんいるんです。お話をいただいて、いざやるぞ!となったときに「本当にしっかりお願いしますね」と言われまして...そういうプレッシャーはありましたね。あと、初めての主演というか「座長」という名目で立たせていただいたのが「パタリロ!」なんです。パタリロを演じるというプレッシャーよりも、座長というプレッシャーのほうが自分の中では大きかったですね。顕作さん(小林監督)をはじめ周りの役者の皆さまに支えがあって、やり遂げることができました。
----映画化決定のときの心境はいかがでしたか?
映画が決まったときは、びっくりしましたね。舞台版のキャストとスタッフさんをそのまま起用して、しかも舞台でやっていた演目・内容をそのまま映画化するっていうのは、ちょっと聞いたことがないですし、面白いなって思いました。
----私も作品を拝見して、舞台を観に来ているような感覚でした! 斬新な映画だなって。
ね、そうですよね! かといって、舞台のDVDを観ているという感覚ではなくて、ちゃんとCGとか映画的な要素もあったりして。ちょうどいい塩梅になったのではと思ってます。
----舞台とはまた違った、映画ならではの苦労した部分はありましたか?
舞台のときはお客さんがいらっしゃる舞台空間なので、BGMとかもちゃんとあるんですけど、映画は、埼玉と千葉の県境くらいのところにある倉庫で撮影させていただいたんです。通常通り営業されているところでやらせていただいていたため、搬入搬出とかの音がすごかったんですよね。ガンガンなってる中でのお芝居は、慣れるまで時間がかかりました。全アフレコになっているので、自分の口に合わせてセリフを入れていくっていうのも、すごく大変でしたね。
----舞台をすでにやられているからこそ、楽しめた部分など、撮影時のエピソードをひとつお聞かせいただけたらと思います。
セリフも結構覚えていたところもあったので、すごくやりやすかったです。あとは、山梨にロケに行ったとき、撮影現場の近くの足湯にみんなで入ったり、カレー食べたり。舞台のときはなかなか全員集まってごはんというのが難しかったので、楽しい時間が持てて良かったです。
----ナマーゲ星人のシーンがかなり印象的でした。ご自身のクローンがあれほどCGで量産されたのを最初に見たとき、どんな印象でしたか?
もう、白組さんのCGで僕がたくさんいるというだけで、すごく嬉しかったですね。撮影のときはブルーバックで、絵コンテでしか状況を知らなかったので、劇場で観たときはすごく感動しました!
----加藤さんは、ダンスが上手なイメージがあるのですが、今回の劇中歌で一番踊っていて楽しかった曲はどれですか?
楽しかったのは「ビバ昭和!」ですね。振り付けと歌詞が新しく劇場版になっていたんです。舞台版では白泉社さんの「ビバ花とゆめ!」という内容で、漫画にちなんだ振り付けだったんですけど、今回は「ビバ昭和!」。万博やホコ天、インベーダーゲームなどを次々とダンスで表現していくのは、すごく楽しかったです。ちょっと団体芸みたいなところもあって、みんなで動きを揃えていく作業も楽しかったですね。
----有名な「クックロビン音頭」ですが、アニメのときとまったく同じ振り付けを劇中でされていて感動しました! でもかなりキツい体勢に見えましたが...実際踊ってみてどうでしたか?
テンポも早くて、(前に手を出すポーズを)深くやるのが難しいんです。なので、実写だとどうしても、このポスターくらいの角度になっちゃうんですけど。僕はすごく楽しんでやらせていただきました。
----ここからは加藤さんの好きな映画についてお伺いさせてください! お気に入りの作品や、人生に影響を与えた作品などはありますか?
人生に影響を与えられた作品は、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。すごく衝撃を受けました。生き生きしている芝居を観ているとやっぱり、いいなあって、こういうお芝居をしたいなって思いましたね。
----いつ頃、観られたんですか?
大学卒業してすぐですかね。その頃は仕事も全然なくて、大学の授業もなくて「なにしよう?」と不安になっていたときに、いろんな映画を観ていたんです。その前に『アンチクライスト』という映画でレポートを書いて、そこからラース・フォン・トリアー監督にすごく興味を持ったんですけど。ある日、友達とご飯にいったときに「『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、本当にトラウマになるから観られない」という話を聞いて、「ラース・フォン・トリアー監督の映画だし!」と思って観たんです。そしたらもう、衝撃を受けまくりました。現実と空想が行き来する作品で、ミュージカルっぽさもあったり、ドキュメンタリーを観ているような生々しい芝居もあったり。あれって、どんどん絶望に向かっていくじゃないですか。初めて「ダメだよ、ぜったいダメだよ」って声を出したくなる気持ちにさせられた映画ですね。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョークさんみたいなお芝居ができるようになりたいなって思いました。
----現在、ラース監督の最新作『ハウス・ジャック・ビルト』が公開中ですね。
絶対観に行きます! ムビチケも買ったんですよ。ラース監督の映画は、シネコンとかの大きいスクリーンで観るよりも、ミニシアターくらいのちょっと密なところで観るのが好きですね。
----加藤さんならではの映画の楽しみ方はありますか。
ぼくはお腹が空いたら飲食とか買うんですけど、なるべく映画が始まる前に食べ終えます。食べながら見ると、集中力が散漫しちゃうというか。あとは観終わった後に、好きな映画はパンフレットを買って、おうちでちょっと余韻に浸りながら読むのが好きですね。
----ひとり映画が多いですか?
そうですね。スケジュールをあわせて誰かと行くとなると、なかなか行けないこともあって。映画って作品の回転も早いですし、舞台も映画もそのときに観るべきものだと思っているので。僕は観に行こうねって約束して、その予定が伸びそうだったら「ごめんね、ひとりで行くからね」って言います。でもこの間、裏切られたんですよ!(笑)。『アメリカン・アニマルズ』を須賀健太と一緒に観に行こうねっていってたのに、「いつ行く?」って聞いたら「え、もう観たよ」って。結構あの人、そういうことするんだよな〜(笑)。
----最後に、本作をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
本作は、歌があって、ダンスがあって、お芝居があって、そしてちょっと昭和的なギャグがある作品です。昭和、そして平成をまたいで令和に、昭和感がいっぱい溢れたこの作品を観て、平成生まれの人にも「こういう世界もあるんだな」と知っていただけたら嬉しいです。何も考えずに観られる作品になっているので、「元気をもらいたいな」っていう人はぜひ劇場で観ていただけたらなと思います。
----加藤諒さん、ありがとうございました!
昭和の匂いぷんぷんのコメディ作品、令和の今だからこそ、斬新に感じるかも! 加藤さん演じるパタリロのドタバタ劇、ぜひ劇場で楽しんでみてくださいね。劇場版「パタリロ!」は6月28日(金)より全国順次ロードショー。
(取材・文・写真/トキエス)
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劇場版「パタリロ!」
6月28日(金)よりTOHOシネマズ 新宿ほか全国順次ロードショー
監督:小林顕作
脚本:池田テツヒロ
原作:魔夜峰央「パタリロ!」(白泉社刊)
出演:加藤諒/青木玄徳、佐奈宏紀/魔夜峰央/西岡德馬/哀川翔ほか
配給:HIGH BROW CINEMA
2019/日本映画/103分
公式サイト:https://patalliro-themovie.jp
©魔夜峰央・白泉社/劇場版「パタリロ!」製作委員会2019