俳優として多くの映画に出演し、メインから脇役までさまざまな作品で活躍する沖正人さん(写真右)と、音楽系の映像制作に多く携わってきた映像ディレクターの海老澤憲一さん(写真左)。今回おふたりは「コーエンジ・ブラザーズ」として初めてタッグを組み、ショートムービー『BOURBON TALK』を制作。街中のバーで、男同士が語り合う。そんな極めてシンプルな設定において、笑いを追求したワンシチュエーションコメディとなっています。今回は、沖さん、海老澤さんに加え、主演を務めた雑賀克郎さん(写真中央)の三人に、映画のこと、そして影響を受けた作品についてなど、語っていただきました!
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------笑いの要素が満載の本作。どんなところに注目するとより一層楽しめますか?
沖さん(以下、敬称略) 笑いということに関して言うと、今回は稽古をかなり厳しくしておりまして。たとえば、同じセリフを言っても、たった1秒「間」がずれるだけでおもしろくなくなってしまいます。なので僕は撮影時、カメラに映らないギリギリのところに立って細かく指示をしていました(笑)。
雑賀さん(以下、敬称略) 出演者の僕らからするとかなり「圧」が掛かって...プレッシャーでしたね(笑)。
海老澤さん(以下、敬称略) 僕は映像担当だったのですが、笑い要素だけの作品にするのではなく、かっこよく撮ってそのギャップを表現しました。そうすることで、作品を観る側の人に、興味といいますかおかしさを持ってもらえたらなと思っています。
------監督のお二人には、明確な役割があったのですね。作品制作にあたって、影響を受けた作品があればぜひ教えてください!
沖 『レザボア・ドッグス』(1992年)や『パルプ・フィクション』(1994年)に代表されるクエンティン・タランティーノの作品ですね、完全に。男同士が集まってくだらない会話をしているんですけど、でもそれがかっこよくてずっと観ていられるんです。そこに加わりたくなるような感じにもなります。僕自身がいまだにそうなんですけど、男性同士がくだらないことを一生懸命やってるってなんかいいじゃないですか(笑)。
海老澤 個人的にコーエン兄弟が好きで、一番最初に観たのが『ファーゴ』(1996年)だったんです。殺人が起きたりとミステリー要素が含まれているんですが、実は喜劇で。主人公が警官なのになぜか妊婦だったり、旦那さんが絵描きで禿げていたりと......キャラクター設定がいちいちおかしくて。そういうくだらなさがいろいろ散りばめられているのがおもしろいんです。ちなみに、僕らはコーエンジ・ブラザーズと名乗っているんですけど、コーエン兄弟はそのネタ元でもあります(笑)。
雑賀 僕は今思うと、昔テレビの深夜帯にやっていたチャールズ・チャップリンは衝撃的でした。特に大学で芝居をはじめた頃はだいぶ意識して、無声の短いコントみたいなのを作ったりして音と動きだけで表現したりしていました。「チャップリンだったらこういう動きをする」といったことはよく考えていましたね。あとはロビン・ウィリアムズも好きで、影響を受けました。
------笑いを追求した本作。やはりお笑い好きの方に観てもらいたい感じでしょうか。
沖 そうですね、お笑いが好きな人や、笑いのセンスがある人にぜひ観てもらいたいです。緩い感じで観ていただければ。「映画を観に来る」という感じで構えてほしくはないです。
海老澤 劇中で、男たちは「ハート」という人物を待っているんですけど、ドアから現れた顔がとても神妙な面持ちで...しかも外見にもきっと突っ込みたくなると思います。随所にお笑い要素が盛り込まれているので、お楽しみに。
雑賀 ウエイトレス役の子が突然豹変するシーンがあるんですけど、個人的に大好きなシーンなので、ぜひ注目してもらいたいです。コメディー作品なので、あまり構えずに、バーで出演者の隣の隣に座っているくらいの感覚で観てもらえたらと思います。
(取材・文/小山田滝音)
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『BOURBON TALK』
監督:コーエンジ・ブラザーズ(沖正人、海老澤憲一)
出演:雑賀克郎、桑山元、豊田崇史、宮崎恵治 ほか
2017/日本映画/28分