昨年は、初めての映画単独主演作『HK/変態仮面』(福田雄一監督)が大ヒット! そして現在は、変態とは打って変わってNHKの朝ドラ『花子とアン』の村岡英治(花子の夫)役で注目を浴びている鈴木亮平さん。そんな鈴木さんの最新主演作がもうすぐ公開! 90年代ストリートカルチャーのアイコン漫画『TOKYO TRIBE2』(井上三太・著)を原作に、園子温監督が「バトル・ラップ・ミュージカル」映画に仕上げた飛ばしまくりの一作『TOKYO TRIBE』です! 様々なトライブ(族)が日々縄張り争いをする近未来の「トーキョー」を舞台に、鈴木さん演じる「ブクロWU-RONZ」のヘッド・メラと、ラッパーのYOUNG DAISさん演じる「ムサシノSARU」の海(カイ)が壮絶バトルを繰り広げるというお話です。
──冒頭から美女ポリスの服を破いておっぱい揉んだり、突然人を刀で斬りつけたり、とにかく極悪非道なメラという役。鈴木さんはどんな風に役を捉えて演じたのでしょうか?
「メラはインパクトのあるエキセントリックな役ですが、役作りに関しては、朝ドラのような役でもこういう役でも、やることはあまり変わらないんです。例えばその人物の考え方や価値観を紙に書いて整理したりしますが、それは今回も同じ。むしろこういう漫画原作の役の方が、何も考えずにやると中身がペラペラになってしまう可能性もありますから。僕は、メラって哀しい奴だと思っているんです。すごく自分にコンプレックスやトラウマがあって、だからこそ暴力で人を服従させて上に立つことで、自分の存在意義を自分で感じたい人なんだと思うんですよ。......あと、ひとつ言えるのは、この映画にはこういう真面目な答えは一切必要ないということですけどね(笑)」
──海役のYOUNG DAISさんはじめキャストの半分以上がラッパーで、鈴木さん自身もラップに初挑戦。どうやって練習したんですか?
「キャストとして出演もしているラッパーのSIMONに付いてもらって、リリック作りから関わらせてもらいました。電車の中、飛行機の中、一人でいる時間はひたすら口ずさんでいましたね。でもこの時は金髪でしたし、今より10kgぐらい体も大きくて。プロレスラーみたいな風貌の奴がすごい顔してずっとラップを口ずさんでるとか、周りの人は怖かったと思います(笑)」
──どんなところに苦戦しましたか?
「ラップで一番難しいのは、やっぱりリズムとタイミング。キックとスネアというのがあるんですが、スネアのタイミングに絶対に合ってないと気持ち悪いんです。現場ではイヤーモニターを入れて、実際にその場で歌っている声を録音したものが本編で使われています。レ・ミゼ方式と僕は呼んでいるんですが(笑)、ただ、やってるうちに自分の声でトラックが聞こえなくなってくるんですよ。感情が高ぶってくると、歌詞も何言ってるのかわからなくなっちゃったりするし。練習ではできていたものが、現場ではできなくなることもありました。もちろんプロのラッパーがやるところは、完全にカッコいい、ちゃんとアフレコしたものが使われているんですが、僕ら役者に関しては、今までにないものをというのが園監督の意向。綺麗にやらなくていい、ズレたりしてもそのままやってくれ、って。台詞とラップの合いの子みたいなものが求められていたので、それが面白くもあり難しかったですね」
──園子温監督って、どんな人なんですか?
「ストレートな熱量がすごく大きいんですよね。映画監督って、特に最近はいろんなことのバランスを取るような仕事も兼ねていたりするので、クレバーな方が多いんですけど、園さんは情熱とアイデア、思いつきがとにかくすごくて、まったく周りが見えなくなってしまうぐらい現場で集中するんです。話しかけても、違うこと考えてて何も返ってこなかったりしますから。でも監督のその熱量に、役者が負けてはいけない!負けたくない!と思わせてくれるんです。この人の度肝を抜きたいって。それだけこっちも準備していくし、考えていくし。僕は今回の現場しか知らないですが、どんどん現場が変わっていくし、シーンも増えていく。例えばメラはポスターで二丁拳銃を持っていますが、もともとメラは刀で戦うキャラで、二丁拳銃のシーンなんてその場で急に出てきたものですからね。刀が並んでいる中に拳銃があったのを見て、園さんがいきなり"この拳銃、携帯にします"って言い出して(笑)。で、それが気に入ったみたいで、"今日はこの二丁拳銃を使ってアクションします"って。今日はって何だよ、メラ日本刀のキャラクターじゃなかったのかよって思いましたけどね(笑)。でも、すごくしっかり準備していったものを、ガーンと崩されるの、僕は好きなんです。ジャズのセッションをしているみたいに、自分の持ちうるパワーをすべて注いで、集中して一発勝負。そういうのがよくわからないエネルギーとして映画に宿っていると思うんです」
──園監督の作品で一番好きなのは? 『TOKYO TRIBE』以外で!
「『気球クラブ、その後』です。決して派手な映画ではないんですが、さっき言った"よくわからないエネルギー"というのがすごく高い作品なんですよね。それは園さんのすべての映画に感じられるものでもあるんですが。なんでなんだろう、本気なんですよね」
──メラのTバック一丁の姿も非常にエネルギーに満ちていましたが、この衣装についてはいかがでしたか?
「ト書きに"Tバック一丁で出てくるメラ"と書かれているのを見て、すごくハードルが高くプレッシャーを感じました(笑)。Tバック一丁でもメラに見えなければいけないわけですから。日本人の体ではなかなか難しいですよ。僕も、もともと線は細い方なので、頑張るしかなかったですね。レスラーのような体型を目指して、ジムに通って。現場ではパイプとかで懸垂したり。キャストの中に、YOUNG HASTLEというラッパーがいるんですけど、彼はすごい筋トレ好きで、代表曲は『Workout』って曲なんですけど。すごい名曲ですよ。"やっぱりササミはヤバい""スジは綺麗に取りたい"で韻踏んでたり(笑)。あと、YOUNG DAISくんにも肩の筋トレを手伝ってもらったり。今回のテーマは上に脂肪を乗せること。変態仮面とは違う、不良の体を目指したんです」
──変態、筋肉不良、朝ドラと、ホントにいろんな役を演じていますが、鈴木さん自身は普段はどんな映画を観ますか?
「ホラー以外は何でも観ます。ジェットコースターみたいな怖さは好きなんですけど、幽霊的な怖さはダメなんですよね。遊び半分でやっちゃいけないです(笑)!」
──青春時代に影響を受けた映画は何ですか?
「いっぱいありますが、特に挙げるなら『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』と『岸和田少年愚連隊』ですね。僕、関西人なんですが、『岸和田少年愚連隊』は関西人の青春のいろんな面を笑いに包んで届けてくれるところがすごく好きですね。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は、脚本と演技と演出のバランスが素晴らしくて、こんな映画を作りたい!ってすごく思いますね。僕にとっては究極のエンターテイメントと言える映画です。しかもその脚本を役者が書いている......マット・デイモンとベン・アフレックが大学の時に共同で書いて、それを自分たちで企画として持ち込んで、最終的にはアカデミー賞脚本賞を取ったという、そのエピソードも大好きです」
──演じるだけでなく、作ることにも興味がありますか?
「ないですし、無理ですね。僕には。何かを生み出すというよりも、感じたい方なんです。お芝居してても、自分が台詞を言うよりも、相手の台詞やその状況を感じてるのが好きだったりするので。生み出す方のタイプではないなぁと思います」
──最後に、最近観てよかった映画、教えてください!
「『アデル、ブルーは熱い色』です。主演の女の子の演技と、それを引き出す演出。その2つが素晴らしかったです!」
鈴木亮平さん、ありがとうございました!
(写真/金谷浩次 文/根本美保子 ヘアメイク/宮田靖士 スタイリスト/八木啓紀)
『TOKYO TRIBE』
8月30日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー!
監督・脚本:園子温
原作:井上三太『TOKYO TRIBE2』(祥伝社)
出演:鈴木亮平、YOUNG DAIS、清野菜名ほか
配給:日活
2014/日本映画/116分
公式サイト:http://tokyotribe-movie.com
©2014INOUE SANTA/"TOKYO TRIBE" FILM PARTNERS
様々なトライブ(族)が日常的に暴動・乱闘を繰り広げつつも、絶妙なパワーバランスが保たれている近未来のトーキョー。しかしある事件をきっかけに、その均衡はもろくも崩れ去り、トーキョー中のトライブを巻き込んだ一大バトルへと発展する......。