藤原竜也さんと山田孝之さんの初共演も話題の、中田秀夫監督最新作『MONSTERZ モンスターズ』。相反する能力を持った2人の男が激突する、サスペンス・アクション映画です! 中田監督、どんな映画ですか!!?
──藤原竜也さんとは『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』以来のタッグですが、次は藤原さんでラブストーリーを撮りたいとおっしゃっていたとか? 「プレス資料に書いてあった? 正確には、ラブストーリー的なメロドラマをやりたいっていうのは欲求としてずっとあったんですが、それとは別に『インシテミル』のあと、また竜也くんと仕事したいよねって企画プロデューサーと話していたんです。そのふたつがどっかでくっついたんだと思うんですけどね。まあ、竜也くんでラブストーリーも全然アリだし、今回図らずも男同士のラブストーリー......とはちょっと言いにくいけど、結果的にそれに近いようなものになったかもしれない(笑)。相反する能力を持ったが故に、出会ってはいけない宿命のふたりが出会ってしまうというお話ですからね。でも、撮影中には男同士のラブみたいなことを意識しながら撮っていたわけではまったくないですよ! ただ、モノローグが明らかにラブストーリー的だったり、抱き合うようなシーンがあったりと、編集して初めてそういう要素もけっこう強いなとは思いました」
──中田監督が思う、藤原竜也さんの魅力とは? 「華があるんですよね。中学を卒業してから芸能界でずっとやってきて、蜷川さんや深作さん、各界の巨匠に鍛えられてきたキャリアを持っていますから。普段、撮影現場にいる時の、ある種のオーラというか華というか、そういうものがずば抜けています。身長が高くすっきりした和風のハンサムで、フォトジェニックでもあるし」
──今回が初のタッグである山田孝之さんはどうですか? 「山田くんは終一というキャラクターを演じたんですが、彼自身の中で終一像というのをとことん追求していたと思います。ひと言の台詞も曖昧には言わない。どういうトーンで言うべきかをカメラテストの直前まで考えて、口の中でずーっとぶつぶつ繰り返していました。竜也くんがわりと自分の感性、いわば勢いでやるタイプの俳優さんだとすると、山田くんの方は精密機械のように自分自身の演技を準備する人なんじゃないかなと思いました」
──役柄も正反対だけど、本人同士も正反対だったんですね! 「本当の人となりはわからないですよ! 僕はあまり俳優さんと友達にならないようにしていますから、どこまで本当の彼らを知っているかはわからない。ただ、彼ら自身にもライバリズムのようなものがあったのかなとは思います。例えば、待ち時間の間にふたり揃ってセットの外に出ていることもあったけど、仲良くリラックスして世間話するようなということはどうもなかったようなんです。僕的にはそれは歓迎すべきことで、こういう映画の場合、オフカメラでふたりがすごく打ち解けてリラックスしていると、その感じが画面にも表れてしまって、緊張感がそがれてしまう面があると思うんです。きっとふたりにもそういう意識があったんじゃないでしょうか。やっぱりプロだなと思いましたね」
──なぜ俳優さんと友達にならないんですか? 「ミステリアスな部分を持っていて欲しいからかな。そこは監督とプロデューサーで違うところなのかも。プロデューサーは俳優さんと親しくしていた方がいいと思うけど、監督の場合は、俳優の普段の生活とか、あまりわかりすぎるのもどうかなって思うんです」
──クライマックスで山田さんが群衆に囲まれるシーンは、まるでゾンビの大群のように見えました。やはりゾンビを意識したのでしょうか? 「特に意識したわけではなく、結果的にゾンビ表現ぽくなったという方が正しいんです。男の"力"によって心も体も操られている何百人もの人々。そのエネルギーを表現するためには、うめき声も必要だと思ったんです。手もだらりとしているだけじゃつまらないので、腕を上げた方がいい。といううちに、結果としてゾンビっぽくなったということなんです。でも、演出の中でエキストラの人たちには"食い殺すつもりで演じて"って言ったかも知れませんね」
──今回はアクション・サスペンスということで、中田監督の好きなサスペンス映画を3本教えてください! 「全部ヒッチコックですが、『レベッカ』『断崖』『見知らぬ乗客』です。『レベッカ』と『断崖』は、僕の一番好きな女優さんジョーン・フォンテインが主演で、彼女の心理的な不安感や恐怖感の描写が素晴らしい。『見知らぬ乗客』は、交換殺人という当時としてはすごくセンセーショナルなアイデアがあり。ザ・サスペンスといった趣の、サスペンスの教科書みたいな作りだと思います」
──ヒッチコックの魅力とは? 「映画の、特にサスペンスというジャンルにおいて、サスペンス映画の神髄......一番のエッセンスをサイレント映画時代から習知していたこと。サスペンスのお手本、教科書みたいな面がありますよね。あと、言葉を選ばずに言うと、ヒッチコックってけっこう変態チックなんですよ。金髪フェチだ、卵コンプレックスだと、いろんなコンプレックスを持っていて、ほんとに初期の作品から金髪の女性に対する劣等感のようなものが色濃く見えるんです。最近、アンソニー・ホプキンスが演じた伝記映画『ヒッチコック』を観ても、女性への敬愛とサディスティックな感情、両方を持っているように感じました。要するに超コンプレックス男なんですよね。あと、ものすごく嫌な奴だったという説もあります(笑)。僕は助監督もやっていましたが、助監督としては絶対につきたくないタイプの監督だけど、撮る映画は天才的。そういう、人間的に不完全なところに惹かれますね」
(取材・文・写真/根本美保子)
『MONSTERZ モンスターズ』
5月30日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:中田秀夫
出演:藤原竜也、山田孝之、石原さとみほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2014/日本映画/112分
公式サイト:http://www.monsterz-movie.jp
©2014「MONSTERZ」FILM PARTNERS
見える人間すべてを思い通りに操れる能力を持った男(藤原竜也)と、その男の能力が唯一効かない男(山田孝之)。対立する能力を持って生まれたふたりの出会いは、大群衆を巻き込む壮絶な闘いへと発展していき......。
──藤原竜也さんとは『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』以来のタッグですが、次は藤原さんでラブストーリーを撮りたいとおっしゃっていたとか? 「プレス資料に書いてあった? 正確には、ラブストーリー的なメロドラマをやりたいっていうのは欲求としてずっとあったんですが、それとは別に『インシテミル』のあと、また竜也くんと仕事したいよねって企画プロデューサーと話していたんです。そのふたつがどっかでくっついたんだと思うんですけどね。まあ、竜也くんでラブストーリーも全然アリだし、今回図らずも男同士のラブストーリー......とはちょっと言いにくいけど、結果的にそれに近いようなものになったかもしれない(笑)。相反する能力を持ったが故に、出会ってはいけない宿命のふたりが出会ってしまうというお話ですからね。でも、撮影中には男同士のラブみたいなことを意識しながら撮っていたわけではまったくないですよ! ただ、モノローグが明らかにラブストーリー的だったり、抱き合うようなシーンがあったりと、編集して初めてそういう要素もけっこう強いなとは思いました」
──中田監督が思う、藤原竜也さんの魅力とは? 「華があるんですよね。中学を卒業してから芸能界でずっとやってきて、蜷川さんや深作さん、各界の巨匠に鍛えられてきたキャリアを持っていますから。普段、撮影現場にいる時の、ある種のオーラというか華というか、そういうものがずば抜けています。身長が高くすっきりした和風のハンサムで、フォトジェニックでもあるし」
──今回が初のタッグである山田孝之さんはどうですか? 「山田くんは終一というキャラクターを演じたんですが、彼自身の中で終一像というのをとことん追求していたと思います。ひと言の台詞も曖昧には言わない。どういうトーンで言うべきかをカメラテストの直前まで考えて、口の中でずーっとぶつぶつ繰り返していました。竜也くんがわりと自分の感性、いわば勢いでやるタイプの俳優さんだとすると、山田くんの方は精密機械のように自分自身の演技を準備する人なんじゃないかなと思いました」
──役柄も正反対だけど、本人同士も正反対だったんですね! 「本当の人となりはわからないですよ! 僕はあまり俳優さんと友達にならないようにしていますから、どこまで本当の彼らを知っているかはわからない。ただ、彼ら自身にもライバリズムのようなものがあったのかなとは思います。例えば、待ち時間の間にふたり揃ってセットの外に出ていることもあったけど、仲良くリラックスして世間話するようなということはどうもなかったようなんです。僕的にはそれは歓迎すべきことで、こういう映画の場合、オフカメラでふたりがすごく打ち解けてリラックスしていると、その感じが画面にも表れてしまって、緊張感がそがれてしまう面があると思うんです。きっとふたりにもそういう意識があったんじゃないでしょうか。やっぱりプロだなと思いましたね」
──なぜ俳優さんと友達にならないんですか? 「ミステリアスな部分を持っていて欲しいからかな。そこは監督とプロデューサーで違うところなのかも。プロデューサーは俳優さんと親しくしていた方がいいと思うけど、監督の場合は、俳優の普段の生活とか、あまりわかりすぎるのもどうかなって思うんです」
──クライマックスで山田さんが群衆に囲まれるシーンは、まるでゾンビの大群のように見えました。やはりゾンビを意識したのでしょうか? 「特に意識したわけではなく、結果的にゾンビ表現ぽくなったという方が正しいんです。男の"力"によって心も体も操られている何百人もの人々。そのエネルギーを表現するためには、うめき声も必要だと思ったんです。手もだらりとしているだけじゃつまらないので、腕を上げた方がいい。といううちに、結果としてゾンビっぽくなったということなんです。でも、演出の中でエキストラの人たちには"食い殺すつもりで演じて"って言ったかも知れませんね」
──今回はアクション・サスペンスということで、中田監督の好きなサスペンス映画を3本教えてください! 「全部ヒッチコックですが、『レベッカ』『断崖』『見知らぬ乗客』です。『レベッカ』と『断崖』は、僕の一番好きな女優さんジョーン・フォンテインが主演で、彼女の心理的な不安感や恐怖感の描写が素晴らしい。『見知らぬ乗客』は、交換殺人という当時としてはすごくセンセーショナルなアイデアがあり。ザ・サスペンスといった趣の、サスペンスの教科書みたいな作りだと思います」
──ヒッチコックの魅力とは? 「映画の、特にサスペンスというジャンルにおいて、サスペンス映画の神髄......一番のエッセンスをサイレント映画時代から習知していたこと。サスペンスのお手本、教科書みたいな面がありますよね。あと、言葉を選ばずに言うと、ヒッチコックってけっこう変態チックなんですよ。金髪フェチだ、卵コンプレックスだと、いろんなコンプレックスを持っていて、ほんとに初期の作品から金髪の女性に対する劣等感のようなものが色濃く見えるんです。最近、アンソニー・ホプキンスが演じた伝記映画『ヒッチコック』を観ても、女性への敬愛とサディスティックな感情、両方を持っているように感じました。要するに超コンプレックス男なんですよね。あと、ものすごく嫌な奴だったという説もあります(笑)。僕は助監督もやっていましたが、助監督としては絶対につきたくないタイプの監督だけど、撮る映画は天才的。そういう、人間的に不完全なところに惹かれますね」
(取材・文・写真/根本美保子)
『MONSTERZ モンスターズ』
5月30日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:中田秀夫
出演:藤原竜也、山田孝之、石原さとみほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2014/日本映画/112分
公式サイト:http://www.monsterz-movie.jp
©2014「MONSTERZ」FILM PARTNERS
見える人間すべてを思い通りに操れる能力を持った男(藤原竜也)と、その男の能力が唯一効かない男(山田孝之)。対立する能力を持って生まれたふたりの出会いは、大群衆を巻き込む壮絶な闘いへと発展していき......。