国宝の宝庫・国立博物館に行ってみよう

国宝に出会えるのは特別展だけとは限らない。東博、京博をはじめ、各地の国立博物館にはいつでも好きなときに自由に見ることができる展示コーナーがある。自分なりの視点やテーマを見つけて、まずは東京、京都の二大博物館を訪ねてみよう。日本美術を主な領域とするライター、エディターの橋本麻里 (はしもと・まり)さんに、その魅力を聞いた。

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多くの人にとって、美術館へ足を向けるきっかけは、「◯◯展」に興味を持って、という場合が多いだろう。だがその一歩先に、「平常展示の楽しみ」がある。考えてみてほしい。海外旅行に出かけたとき、ことさら美術好きではなくても、パリならルーブル美術館、ロンドンなら大英博物館、ニューヨークならMoMAことニューヨーク近代美術館あたりは一応行っておくか、ということになる。そのとき美術館へ足を運ぶ理由は特別展目当てではなく、例えば「ルーブル美術館へ行けば必ずモナリザが見られる」という形での、平常展示の底力への期待であるはずだ。
同じように、日本国内でももっと平常展示が見られるようになってほしいのだが、日本の、特に古い絵画作品は、紫外線や湿度の影響を受けて傷みやすいため、油彩画のように常に展示したまま、というわけにいかず、こまめに作品の入れ替えが行われている。そうした状況も踏まえた上で、「国宝を見たい」人が気軽に足を運び、質の高い作品をいつでも数多く見られる場所といえば、まずは国立博物館だろう。
現在では、東京、京都、奈良、九州(福岡)の4か所にあり、所蔵作品と寄託作品を定期的に入れ替えながら展示する平常展示、また期間を限って他館からも作品を借り、ひとつのテーマの下に構成、「◯◯展」と銘打って紹介する特別展示のほか、文化財の保存、調査、修復などを行っている。
中でも東西の双璧として知られるのが、東京国立博物館、京都国立博物館の2館だ。日本を中心に広くアジア諸地域にわたる文化財を収集(実はエジプトのミイラまである)、本館(1938年、渡辺仁〈わたなべ・じん〉設計、重文)をはじめ4件の重文建築を擁し、所蔵・寄託含めて143件の国宝を預かるのが東京国立博物館。京都国立博物館はといえば、自らの所蔵品に加え、京都一円の寺社に伝えられた文化財の保管を一手に引き受ける「都(みやこ)の宝蔵」として、こちらも114件の国宝を収蔵(平成29年3月末現在)。いずれ劣らぬ、魅力的な博物館なのである。
■『NHK趣味どきっ! 国宝に会いに行く 橋本麻里と旅する日本美術ガイド アンコール放送』より

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