文化財保護法ができるまで

国宝や重要文化財といった国にとって非常に価値の高いコレクションを分類、指定する制度はいつ頃発祥したのだろうか。日本美術を主な領域とするライター、エディターの橋本麻里 (はしもと・まり)さんにうかがった。

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書画や陶磁器などのコレクションを整理分類し、レーティングする制度は、さかのぼれば室町時代、足利将軍家による東山御物の選定に始まった。以後、特に茶道具の分野で小堀遠州(こぼり・えんしゅう)の遠州蔵帳(くらちょう)、松平不昧(まつだいら・ふまい)の雲州蔵帳など、時代を画する数寄者(すきしゃ)が自身の身命を賭けて選び抜いた錚々(そうそう)たるリストが数多く残されている。
現在のような形の、国が国宝を指定する制度は、明治30年(1897)の「古社寺保存法」がその原点だろう。明治維新以後に発せられた神仏分離令と、それに伴う廃仏毀釈の嵐などによって、仏教界は大きな打撃を受け、宝物の流出も多かった。これを保護・保存するために整備された法律だったのである。昭和4年(1929)に公布された「国宝保存法」では、建造物も指定の対象とし、所蔵先も社寺に限らず、個人や自治体、各種組織が含められた。そして戦後の昭和25 年(1950)、「文化財保護法」によって、あらためて文化財の定義が確認され、重要文化財、国宝を指定し直したのである。
■『NHK趣味どきっ! 国宝に会いに行く 橋本麻里と旅する日本美術ガイド アンコール放送』より

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