千駄ヶ谷の受け師、本領発揮なるか

左/木村一基九段、右/川上 猛六段 撮影:河井邦彦
第67回 NHK杯戦 1回戦 第18局は、木村一基(きむら・かずき)九段(収録時は八段)と、川上 猛(かわかみ・たけし)六段の対局となった。君島俊介さんの観戦記から、序盤の展開をお伝えする。
(注:川上猛六段は2017年10月17日付で七段に昇段しました)

 



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■対局前

3年ぶりの本戦。川上は控え室で緊張した表情を浮かべていた。今回で7回目の出場。話の輪に入らず、身動きもあまりしないで静かに気を高めている。
木村は初参加の第48回以外は毎回本戦に出場している。今回で19回目だ。本局は九段昇段がかかった一局だが、どの駅からNHKの放送センターに向かうのが近いか(いちばん距離が近いのは代々木公園駅)など雑談に交じって余裕を感じた。
対照的な2人だが、盤の前に座ればふだんどおりの対局姿だ。川上の緊張もほぐれて見えた。


■角換わり拒否

対局が始まると、木村は間髪を入れずに指して、角換わりを目指した。作戦の分岐点である2図。川上は△4四歩と角道を止める。副調整室のスタッフが「あれっ、止めちゃった」と声を上げる。角換わりと比べると実戦例が少ない進行だ。
川上は「先後問わず矢倉系のじっくりした将棋にしようと思っていた」という。木村もこの展開を予想していた。
▲5六歩は▲6八角から角交換を目指したもの。▲4六歩なら、角を将来5九から2六や3七に使う展開が考えられた。


■銀冠

川上は1972年生まれで木村は1973年生まれ。ただ、奨励会入りは木村が1年以上早く、四段昇段は川上が5年早い。少しややこしいが、川上は「木村さんが先輩」という。
川上は酒が飲めず、木村は大好きと対照的だ。「昔徹夜で麻雀(まーじゃん)を打った記憶がある」と木村。
3図のような展開は△2三銀から銀冠を目指すことが多い。△8六歩はより力戦の色合いが濃い。先手の木村が銀冠に組んだ。解説の行方八段は「銀冠はプロ好み。バランスや連結がいい囲いで玉が広い」と話す。

■『NHK将棋講座』2017年10月号より

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