人も虫も魅了するネペンテス

やせた土地で育つネペンテス。肥料を控えてピッチャーの個性を引き出す。撮影:田中雅也
ティランジアからサボテン・多肉、観葉植物まで……注目の植物を紹介する連載「今、熱い植物」。今月は、食虫植物栽培家の鈴木廣司(すずき・ひろし)さんに、ネペンテスの魅力をうかがいました。

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■花とピッチャー 虫を誘う妖しい魅力

色とりどりに咲く花が人の心を揺さぶるように、怪異な姿の植物もまた、人の心に大きく訴えてくるものがある。その最たるものの一つが、食虫植物だろう。その名のとおり虫を捕らえ、自らの栄養とする植物だ。それだけでも、植物としてかなり変わったものという印象を受けるが、姿も変わったものが多い。その代表格がネペンテス(ウツボカズラ)だろう。
ネペンテスの姿で最も特徴的なのは、ピッチャーとも呼ばれる袋状の器官。
「ピッチャーは捕虫袋ともいい、ここで虫を捕らえます。ピッチャーは葉の先端についているように見えますが、じつは葉が変化したものです。葉のように見えているのは、ほかの植物だと葉柄にあたる部分なんです」
そう語るのは、食虫植物のナーサリーを営む鈴木廣司さん。
「ネペンテスを育てていて一番楽しいのは、種類や個体によってピッチャーに異なる個性が表れること。違う種類を交配することで、驚くような色彩が現れることもあるんですよ」(鈴木さん。以下同)
その一例が写真のネペンテス(N・ビーチイHL〈※〉とN・バービッジアエの交配種)。ピッチャーの縁に入る絹織物のような光沢とつや、そして内側に入るモザイク状の模様など、その美しさから人気の交配種だ。
「こうした袋の個性を引き出すには、種類に応じた冬越し、夏越しをさせることが重要になってきます。まずは育てたい種類がどんなタイプなのかを把握しておきましょう」

■おすすめは暑さに強いローランド系

「初めてネペンテスを育てる人におすすめなのは、ローランド系のグループ。海沿いから標高1000mまでの低地に自生し、夏越しがしやすいタイプです。しかし、冬場の低温に弱いという性質があります。
標高1000m以上の高地に自生するハイランド系は比較的冷涼な気候を好むため、室内であれば冬の低温にも耐えますが、夏の暑さに弱いところがあります」
どちらも年間を通じて十分な空中湿度を保つ必要はあるが、夏に冷涼な環境を用意するよりは、冬場に暖かくするほうが簡単ということで、ローランド系が育てやすいそうだ。
※ N・ビーチイのハイランド系。N・ビーチイにはローランド系(LL)もある。N.ビーチイ=N.veitchii N.バービッジアエ=N.burbidgeae
■『NHK趣味の園芸』2017年10月号より

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