芝野虎丸三段VS. 陳嘉鋭九段 才気あふれる好局

左/陳 嘉鋭九段、右/芝野虎丸三段 撮影:小松士郎
第65回NHK杯1回戦 第12局でぶつかったのは、17歳の芝野虎丸(しばの・とらまる)三段と、62歳の陳 嘉鋭(ちん・かえい)九段。才気煥発な若手の猛攻を、力戦派のベテランはどう受け止めたのか。六本木 均さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。
※芝野虎丸三段は、本体局後の8月1日付で七段に昇格のため、当記事では三段で表記

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■才気あふれる好局に酔う

才能豊かな17歳、芝野虎丸三段は2年連続2回目の出場である。今年は王座戦で本戦入りを果たすなど大活躍で、期待が高まる。
近ごろ若手の台頭が著しく、入段して間もなく一流棋士と互角の勝負を繰り広げる逸材がめじろ押しである。リーグ戦やタイトルマッチにも新鮮な名前がひしめく活況で、日本碁界の将来は明るい。そんな若手の中でも、ひときわ輝きを放つ逸材、芝野のはつらつとした戦いに注目である。
迎え撃つのは関西のベテラン陳嘉鋭九段。中国出身の62歳。5年ぶり17回目の出場である。力戦派として鳴らし、若手の突進を吹き飛ばす破壊力がある。
解説は宋光復九段。「芝野さんの厳しい攻めを、陳さんが受けて立つのか、あるいはかわしにいくのかが見もの」と予想していた。
碁は宋九段の見立てどおり、芝野が鋭く踏み込む迷いのない戦いを挑み、陳が戦いながらかわす難しい展開になった。

■陳が仕掛ける


黒Aにツグより隅は味が悪いが、ダメをつめているので白12、14に対する迫力が違う。その功罪がどう影響するか。この碁の一つの焦点になる。
白18とオイて黒の薄味をくすぐる。白からすぐに手があるわけではないが、狙いは残る。黒も気になるところだが、まさか手を入れるわけにもいかない。微妙なあいまいさを残しながら、戦いに突入していくのである。
白32の手入れは欠かせない。これがないと、1図、黒1のオキが厳しくなる。黒5までワタられては白が浮き石になってすぐ負けになる。
右辺の白も薄いが、黒Bの切りから白C、黒Dのシチョウは、白Eと逃げ出して成立しない。

2図、黒1の切りから3とアテるのは、白4とアテ返して白一子を捨てる作戦で無事だ。隅に黒7の一手が必要だから、黒の追及は不発に終わる。
序盤は黒の陳が仕掛けて、白の芝野虎丸三段が迎え撃つ展開である。陳はやはり、生っ粋の戦闘派だ。若いときと変わらない。
※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2017年8月号より

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