カラフルな刺激! 観るトウガラシ

撮影:伊藤善規
わが国で古くから親しまれてきたトウガラシ。実の形や色彩が楽しい観賞用トウガラシ、そして辛さの違いを楽しむ食用トウガラシがありますが、栽培方法に差はなく、簡単なコツをつかめば上手につき合えます。実つき苗を使ったこの時期ならではの楽しみ方をご紹介します。教えてくれたのは、園芸研究家の奥 隆善(おく・たかよし)さんです。

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トウガラシの実をひと言で表すとしたら何でしょう? かわいい? かっこいい? おもしろい? 決めかねますよね。トウガラシには食用と観賞用とがありますが、種としての違いはなく、特に美しい実をつけるものを観賞用としています。そうそう、私たちが日ごろ食べているピーマンも、シシトウも、タカノツメも、なんと、同じ種なのです。
日本でのトウガラシの歴史はたいへん古く、キリスト教が伝来したころに近い1500年代半ばに薬用、観賞用として始まったとされる説もあります。江戸中期以降からはソバの普及で、薬味としての利用が進みました。さらに明治、大正に入ると、食の洋風化につれてカレー粉やソースの材料として広まっていきました。薬味使用としてではなく、野菜としてピーマンが普及したのは第二次世界大戦後。パプリカなどは、まだまだつい最近の新顔野菜なのです。

■鉢から楽しむ「観るトウガラシ」

園芸店の店先に並ぶ、美しいトウガラシの鉢。実が上向きの房なりタイプが主流です。好みに合わせた楽しみ方、世話の仕方を見ていきましょう。
トウガラシ属のルーツは南北アメリカ大陸。低緯度地域に20種程度がありますが、栽培されているのはごくわずか。特に観賞用はアンヌーム種が栽培種のほとんどを占めています。基本的には食べられますが、実が堅く、辛さにうまみがないこと、食用の基準で認められない農薬を使用していることも多いので、来歴のはっきりしないものは口に入れないでください。
一度実った実は難しい管理をしなくても長期間楽しめ、株の大きさも3〜5号鉢程度まであります。秋に流通する株はハロウィーンの飾りに、寒くなったら室内に取り込んで傷んだ葉を取り除けば、クリスマスまで飾ることもできますよ。
■『NHK趣味の園芸』2017年8月号より

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