「肥料の三要素」チッ素、リン酸、カリの働きは?

イラスト:山村ヒデト
肥料の話になると必ず登場するのが、チッ素、リン酸、カリの3つの肥料成分です。それぞれどのような働きをしているのか、また、不足や過剰によって何が起きるのかを、東京農業大学名誉教授の後藤逸男(ごとう・いつお)さんに教えてもらいました。

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■摂取しなければならない重要な3つの要素

植物が生きていくために、摂取しなければならない栄養分を「必須要素」といい、
17種類あります。そのなかで肥料として施す必要があり、重要なのが、「肥料の三要素」と呼ばれるチッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の3種類です。
植物の生育に最も大きく影響する要素がチッ素です。チッ素は、植物の体を形作るたんぱく質や、光合成に必要な葉緑素など、植物体の中で大切な働きをする物質の構成元素として重要です。葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」といわれます。
チッ素が不足すると、下葉に含まれるたんぱく質や葉緑素が、旺盛に生育している株の先端のほうに送られるため、下葉から黄色くなってきます。株の生育が衰えて葉が小さくなる、分枝しにくい、草丈が伸びないといった症状も現れます。
逆にチッ素が多すぎる場合には、葉色が濃い緑色になり、茎や葉ばかりが茂って、花や実がつきにくくなります。また、植物体が肥満化して軟弱になるため、病害虫の被害も受けやすくなります。

■開花・結実を促すリン酸

リン酸は、遺伝情報の伝達やたんぱく質の合成などを担う核酸(DNA、RNA)の構成成分として重要です。開花・結実を促すため、リン酸は「実肥(みごえ)」といわれています。ほかに、植物全体の生育、枝分かれ、根の伸長などを促す働きもあります。
リン酸が不足すると、下葉から緑色や赤紫色に変色し、株の生育が衰えてきます。開花や結実に加え、実の成熟が遅れて収穫量が減ったり、品質が低下したりします。
逆にリン酸が過剰な場合は、直接的な症状は現れにくいのですが、土壌病害が起きやすくなります。

■根の発育を促進するカリ

「根肥(ねごえ)」といわれるのがカリです。植物内では、水に溶けるカリウムイオンの形で存在しています。葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、病気や寒さなどに対する抵抗力を高める働きがあります。
カリが不足すると、下葉の先端や縁から葉が黄色くなって葉が枯れ始め、果実の品質も低下します。
逆にカリが過剰な場合は、過剰症状は現れにくいのですが、マグネシウムが吸収されにくくなります。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2017年7月号より

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