佐藤康光九段、3度目の優勝に虎視眈々

左/千田翔太六段、右/佐藤康光九段 撮影:河井邦彦
第66回NHK杯戦 準々決勝 第1局は、、佐藤康光(さとう・やすみつ)九段と、千田翔太(ちだ・しょうた)六段の対局だった。森充弘さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

* * *


■年男

佐藤は昭和44年の酉(とり)年生まれで今年は年男。対局前の控え室では干支(えと)の話題に花が咲いた。
千田と解説の森内俊之九段は戌(いぬ)年生まれで来年が年男。「将棋界では戌年の棋士がいちばん多いですよね」と佐藤が話す。
私は以前、干支別の棋士の人数を調べたことがあり、酉年が一、二を争うほど多く、戌年は中位だったことを思い出した。
そのことを伝えると、佐藤は「えっ、本当ですか」と驚き、うれしそうな表情になった。
佐藤が戌年の棋士が多いと感じていたのには理由がある。

■新しい将棋を創る

20年以上前のことになるが、年に一度、NHK放送センターの近くにあったうなぎの店で戌年生まれの棋士が集まる「戌年の会」が開かれていた。
「戌年の長老、加藤治郎名誉九段を囲む会でした」(森内)
当時から現在に至るまで、戌年だけがこのような会をやっていたわけで、佐藤が戌年の棋士が多いと感じたのは無理もない。
「これだけ変わってしまう人も珍しい」(森内) というほど佐藤の棋風が変化したのも、きっかけは戌年の羽生善治三冠だった。佐藤は自著で、30代になって対羽生戦で大きく負け越したことが棋風改造の発端になったと書いている。
プロの将棋では、相手との駆け引きの中で、指したい手を自制する場面のほうが多いが、それをやめて自由に将棋を指す、というのが佐藤の現在の志向だ。
佐藤の、常識を裏から見直し、初手から疑ってかかる姿勢は、アプローチは異なるが、千田にも共通する。
「千田さんは几帳面(きちょうめん)で、一つのことを掘り下げる研究者タイプ。日に日に強くなっています。コンピューターから学んで、新しい将棋を創っていく人なのだと思います」(森内) 
 
本局は佐藤のダイレクト向かい飛車に対し千田の矢倉模様。△5四歩(1図)のところ△2二飛が通常の手順だが、▲6五角と打たれる筋がある。それでも一局だが、△5四歩は△2二飛としたあとの▲6五角を防ぐ手で、佐藤は最近2局続けて採用している。実戦では3例目。しかし、先手が9筋の歩を突いている場合には、多少事情が変わってくるという。

「ここでの△5四歩は不用意でした。1図から▲2五歩と突かれたら、すぐには△2二飛とできませんでした」(佐藤)
9筋の歩が突かれていなければ、△2二飛に▲5三角と打たれても△4四角で受かっているが、9筋の歩が突かれている状態では、△4四角に▲9七角成と馬を作られ、▲5三角が成立してしまうのだ。1図から▲2五歩なら、後手は中飛車か居飛車にするということになる。
▲5六角(2図)は、▲3四角と歩を取って、状況に応じて攻撃を仕掛けようという狙い。
■『NHK将棋講座』2017年4月号より

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