ジャガイモが主食の国、ドイツのジャガイモ料理

ジャーマンポテトは塩ゆでしたジャガイモの残りを薄切りにして作る、日本で言うところの「冷やご飯で作るチャーハン」的な料理。時間をかけてじっくりと焼き、カリッと仕上げます。撮影:安彦幸枝
日本人のお父さまとドイツ人のお母さまのもと神戸で生まれ、日本、ドイツ、アメリカで育った料理研究家の門倉多仁亜(かどくら・たにあ)さん。テレビや雑誌などでドイツのライフスタイル全般を紹介しつつ、鹿児島でのスローライフを楽しんでいます。
ドイツに住むおばあさまのジャガイモ料理に、幼いころから慣れ親しんできた門倉さんに、ドイツのジャガイモ事情を教えていただきました。

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ドイツにおけるジャガイモは、日本における白米と同じような存在で、もう一つの主食であるパンを日に二食、ジャガイモは一日一度、必ず食べるのだそうです。塩ゆでに、残ったら炒めて、焼いて、また、サラダにしたり、おだんごにしたりするなど、さまざまな調理法があります。
「まずは塩ゆで(または蒸す)が基本です。これはソーセージやハンバーグのほか、肉や魚料理の付け合わせにしますが、余ったら、ラップをかけずに冷蔵庫に一晩おいて水分をとばし、料理に活用します。いわゆる、冷やご飯的な使い方です。日本のお米に例えるならば、塩ゆでは白いご飯。残った塩ゆでを活用するジャーマンポテトはチャーハン。冷やご飯を炒める感覚です。さまざまな素材を入れて作るポテトサラダは混ぜご飯。こう考えるとおもしろいですね(笑)」
食卓に、一度に数種類のジャガイモ料理が並ぶこともあるのかと思っていましたが、あくまで主食なので、基本的に一種類しかジャガイモ料理は食べないのだそうです。
収穫は春と秋の年二回。かつては、秋休みは「ジャガイモ休み」とも呼ばれ、学校も休みになるほどで、みんなで収穫作業を行っていました。門倉さんのおばあさまのお宅でも、収穫分を地下収蔵庫で保存していましたが、戦後は市場で買うようになったそうです。
ところで、気になるのが栽培される品種。日本では、ホクホクとした食感の男爵薯(だんしゃくいも)、しっとりねっとりとした味わいのメークインを主に使い分け、どちらも好まれますが、ドイツには「ジャガイモを煮くずれさせたら嫁にいけない」という格言があるほどで、門倉さんもそこにはこだわりがあるのだとか。
「ドイツでよいとされるのは、表面がつるんとした状態に仕上げること。市場などでも、煮くずれしやすさのランクを表示して販売することが、法律で定められているんですよ」
つまり、主流は煮くずれしにくいメークイン系。ゆでる、蒸す、煮るなどの調理に使われます。マッシュポテトやおだんご、パンケーキなど、つぶしたり、すりおろしたりして調理する場合には、煮くずれしやすい男爵薯系のもの、と使い分ける文化をもっているのです。
「もう一つ、切ったジャガイモを水にさらしたときに沈殿する、でんぷんも調理に活用します。スープや煮汁に加えると、とろみづけになるんです」
おなじみの素材でも、日本とはひと味違ったさまざまな活用法が興味深いドイツ。私たちがジャガイモの栽培や料理をする際に、新たなヒントを与えてくれそうですね。
※文中のジャガイモ料理のつくり方はテキストに掲載しています。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2017年3月号より

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