「決勝戦でもおかしくない」 名人vs.竜王の激戦

左/佐藤天彦名人、右/渡辺 明竜王 撮影:河井邦彦
第66回 NHK杯戦 3回戦 第5局は佐藤天彦(さとう・あまひこ)名人(先手)と渡辺 明(わたなべ・あきら)竜王(後手)のタイトルホルダー同士の対局となった。いしかわごうさんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■ゴキゲン中飛車対超速

「3回戦でこの2人のカード。決勝戦でもおかしくないです」そう語ったのは、解説の村山慈明NHK杯選手権者である。渡辺と佐藤。タイトルホルダー同士の一戦となった本局は、3回戦における最注目カードと言っても過言ではないだろう。

戦型は後手の渡辺が△5四歩から△5二飛と飛車を振って、ゴキゲン中飛車となった。先手の佐藤は早めに銀を繰り出す超速▲3七銀で対抗する。両者が激突した第41期棋王戦五番勝負第3局と同手順の出だしとなった。
 
 

■後手で飛車を振る理由

居飛車党で知られる渡辺だが、最近は後手番で振り飛車を採用することも珍しくない。非公式戦ではあるが、昨年の第50回東急将棋まつりでの席上対決でも佐藤相手に振り飛車から相穴熊を採用している。
こうした狙いを渡辺に聞くと、「振り飛車は玉を囲える、自分から動けるという意味で早指し戦では特に有力だと思っています。相居飛車の後手番は守勢になるので」と明かしてくれた。持ち時間の少ないNHK杯戦は主導権を握ることが重要。振り飛車は後手番ながら戦いやすい、有効な作戦と認識しているようだ。
渡辺の出方は、佐藤も想定の範囲内だったようである。「最近の渡辺さんは振り飛車を採用することも多いので、ゴキゲン中飛車もあるかなと思っていました」と振り返る。両者の指し手は、前例どおりによどみなく進んでいく。

▲8六角と佐藤がのぞいた手に、渡辺の手が初めて止まる。早い段階で後手の駒組みを牽制(けんせい)する狙いだ。棋王戦では△6二飛とした局面だが、本譜では△3二飛とした(3図)。3筋からの攻めも視野に入れた積極的な構えである。
※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK将棋講座』2017年3月号より

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