京都での暮らしに山野草が寄り添う──山野草愛好家団体の活動

撮影:成清徹也
山野草を愛してやまない人たちが集まる愛好家団体。いったいどのような活動が繰り広げられているのでしょうか。京都山草会にお邪魔してお話を聞きました。

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昭和39(1964)年に発足し、今年で50年を超える歴史をもつ京都山草会。現在は、京都在住者を中心に約90名の会員が在籍し、京都府立植物園を拠点に活動している。
「活動の柱は3つ。年3回の展示会、月1回の例会、写真やスケッチなどのクラブ活動です」と、会長の森元陽三さん。
「活動の中心となっているのは例会です。タネまきや植え替えなど、その月に必要な作業の講習や、情報交換などを行っています。関西の土や気候に合った栽培方法を知ることができる貴重な場です」
会の目的として「栽培知識の向上」を掲げてはいるものの、堅苦しさはなくアットホームな雰囲気。同じ山野草好き同士、それぞれが丹精込めて育てた鉢を持ち寄れば、自然とおしゃべりにも花が咲く。
特に面白いのは、育てる環境がみんな違うこと、と森元さん。
「日当たりも風通しも悪い町家住まいの人、神社やお寺の近くなど自然に恵まれた環境に暮らす人、街なかのマンション住まいの人、といろいろな人がいます」
ひと口に京都といっても、住まいの形態やエリアによって、栽培環境は大きく違ってくる。
「自分とは異なる環境に住む人が、どんな工夫をしながら育てているのか。仲間と話すたびに、新しい発見があります」
山野草に目覚めたきっかけも、人それぞれだ。
「子どものころから身近だったのでいつのまにか好きになっていた人、写真を撮りたくて育て始めた人。ガーデニングをやっていたけれど物足りなくなって山野草にたどり着いた、という人もいます」
洋花からの転向組はいても、逆は少ない、というのも興味深い話。
京都山草会は、全国に存在する山野草愛好会のなかでも、特に活発な活動で知られている。それには京都ならではの理由が考えられるのでは、と森元さん。
「神社仏閣が多く、自然豊かな京都では、山野草を目にする機会が日常的にあります。また、お茶の文化に親しんでいる人が多いので、茶花としても身近。そうしたことから、山野草への愛着が育まれやすい環境といえるのではないでしょうか。また、先々代の会長が、全国の山野草会を牽引するカリスマ的な人物だった影響も、大きいと思います」
古都の風景に似合う山野草。この土地に暮らす人々の暮らしに、長く深く根ざしている様子がうかがえる。
■『NHK趣味の園芸』2017年3月号より

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