温室が10倍楽しめる! 注目するべきポイント

年末、葉を赤く染めるポインセチアは、本来こんなにも大きくなる。撮影:田中雅也
外は冬でも、中に入れば常夏のような温室ですが、日本で熱帯の植物を育てるには、さまざまな苦労があります。温室を日々管理する方たちが大事にしているポイントを知れば、温室の見方もガラッと変わるはずです。国立科学博物館 筑波実験植物園の遊川知久(ゆかわ・ともひさ)さんにお話を伺いました。

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■温度が高ければよいわけではない!?

ひと口に熱帯といっても、緯度や標高が違えば温度や雨の量がまったく異なります。また季節による気候の変化のパターンもさまざまです。そこで温室ごとに環境を変えて、世界のさまざまな場所の植物を育てられるようにしています。また一つの温室の中でも環境が大きく違うことを生かして、その場所に合った植物を見つけて育てることが大切です。植物園では植物と環境をセットで体感してみましょう。

■植物によって与える水も使い分けている!?

筑波実験植物園では井戸水を植物に与えています。しかし、木の上ややせた土に生える植物のなかには、井戸水では、うまく育たない植物もあります。栄養が多い井戸水は植物の生育によさそうですが、このような特徴的な場所で育つ植物には適していません。またカルシウムやケイ素などのミネラル分が多いと元気よく育たない植物がしばしばあります。そのため一部の温室では、逆浸透膜フィルターで井戸水をろ過し、純水に近い水を使っています。

■本来一緒にいるはずのない植物が隣にいる!?

現地の景観を演出するには、一緒に植える植物の組み合わせがポイントです。たくさんの動物が一つのページに収まった、子ども向けの生きもの図鑑のように、「ありえないけどありそうな景色」をイメージして生態的にウソのない植栽をつくります。生育環境の近い植物を集めて植えることは、管理の面でも効率的です。自生地をぐっと濃縮したような生物多様性が楽しめるのが植物園です。

■着飾った姿よりも、植物本来の姿が見られる!?

通常の花壇では、「植物のきれいな状態を見せる」ため、花がらは摘み取り、伸びすぎた枝はすぐに切ります。しかし、植物園の大温室では、植物を本来の野生の姿で見せるように心がけています。鉢花として売られているポインセチアやトックリランなども大きな木に育っています。また枯れた花茎なども形がおもしろい場合はあえてそのまま残し、植物本来の姿を知ることができるようにしています。
■『NHK趣味の園芸』2017年1月号より

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