藤沢里奈三段、山下敬吾九段にどこまで食らいつけるか

左/山下敬吾九段、左/藤沢里菜三段 撮影:小松士郎
第64回NHK杯2回戦 第3局(2016年8月21日放送)は、山下敬吾(やました・けいご)九段(黒)が、藤沢里菜(ふじさわ・りな)三段(白)を迎え撃った。内藤由起子さんの観戦記から、序盤の展開をお伝えする。

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楽しみな一戦だ。トップ棋士山下敬吾九段に、1回戦で王銘琬九段を破った藤沢里菜三段がどこまで食らいつけるか注目だ。
対局前の控え室は和やかな雰囲気だった。山下が「NHKの中をうろうろしていると、有名人に会ったりするの?」と記録係の小山空也三段ににこやかに話しかけたのをきっかけに、テレビ談議に。
7月から民放で放送されている囲碁を題材としたテレビドラマに、若手棋士が多数エキストラとして出演している。特に小山は主演俳優との対局シーンがあった。その場面で藤沢も少しだけ登場したようで、「囲碁界のスターが…」と盛り上がっていた。
解説の小林覚九段は、「この碁の解説ができるのはうれしいです。両者ともに力強い棋風。山下君でも、そんなに簡単にはいかないでしょう。どちらかがツブれる乱戦になるのでは」との予想に反し、じっくり落ち着いた立ち上がりとなった。

■つらいグズミ

両者は、公式戦初手合だが、研究会では何回か打ったことがあるという。 
黒7のハサミに白が8とワリ打ち、黒11のハサミにも白12から16と、おとなしく応じる。
白18と頭を出した時点で、「この下辺の幅を黒が支え切ったら、黒が形勢よしと判断できます」と小林覚九段。
白22では1図の白1と打ち込んでいきたいところだが、黒2のノゾキから眼がなくなっては痛い。白22はつらいがしかたがない。藤沢里菜三段、ここは耐えた。

黒は23と押し、白24に調子で黒25と守った。
ここで藤沢は白26と柔らかく迫ったが、どうだったか。黒27と狭いながらヒラキが打てては、黒十分の構えだ。
小林九段は、白26では2図の白1まで迫りたかったと言う。
黒2のカケが心配なのだが、白3、5と眼形を奪って9とトンで戦えた。
いつもの藤沢なら2図を選んだのではないか。今日の藤沢は、ふだんと違う印象だ。 
山下敬吾九段のパワーを警戒しているのか、かわすような打ちぶりだ。
※ 投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2016年11月号より

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