タマネギは根菜ではない?──タマネギにまつわる疑問

撮影/田渕睦深
球になるからタマネギですが、太った球は、茎なの? 実なの? 色も形もさまざまなのは、いったい何が違うから? タマネギ博士に聞きました。

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■タマネギは、根菜(こんさい)ではない

「タマネギの皮をむくように」という慣用表現がありますが、一枚一枚むけるタマネギの部分は、皮ではありません。実でもなければ茎でもなく、地中で育つけれど、根でもない。じつはタマネギは、葉(鱗葉〈りんよう〉)の集合体(鱗茎〈りんけい〉)です。
「縦2つに割って断面を見るとわかりますが、根元にある短い部分が茎です。鱗葉はそこから出て、巻くように重なっていき、成長するにつれて太くなっていくんです」。そう教えてくれたのは、タマネギに詳しい農研機構北海道農業研究センター 作物開発研究領域上級研究員の室 崇人(むろ・たかと)さんです。
「タマネギの鱗葉の数は、個体にもよりますが、だいたい8枚です。輪切りにすると葉の枚数がわかるので、数えてみてください。ちなみに、タマネギを切らずに見たとき、私たちの目に触れる外側は、葉の裏にあたるんですよ」
タマネギの球には、水分や養分が蓄えられています。それは、新しい芽を育てるため。長く貯蔵されていたタマネギを切ると、真ん中に緑の芽が出ていることがありますよね。
「あれが新しい芽の『萌芽葉(ほうがよう)』です。萌芽葉ができると、蓄えられた養分はそちらに移っていき、芽が成長するにつれ、タマネギはしぼんでいきます」
私たちは、その大事な栄養タンクを、いただいているのです。

■黄・赤・白は、色素の違い

日本で流通しているタマネギの大半は、「黄タマネギ」と呼ばれる皮の黄色いタマネギ。サラダなどで食べられる、赤紫色の「赤タマネギ」に、春先に見かける「白タマネギ」を加えて、タマネギは3色に分けられます。
「色の違いは、含まれている色素の違いです。黄色はケルセチンの色、赤はアントシアニンの色、白タマネギには色素がありません。赤タマネギは生食されるので、柔らかいと思われていますが、じつは堅い品種もありますし、加熱調理して食べることが多い黄タマネギにも、みずみずしい品種があるんですよ」
タマネギは、品種名で売られることが少ない野菜ですが、国内の種苗メーカーが売っているものだけでも、100品種近くあるそうです。

■葉タマネギや小タマネギは、種類が違う?

最近は、青々とした葉つきの「葉タマネギ」や、まるごと調理できる「小タマネギ」もスーパーで見かけますね。形の違いは品種の違いかと思いきや、収穫のタイミングによるそうです。
「タマネギは、どんな品種でも同じように育ちます。上に伸びる葉が緑の状態で下の球が太り始め、球が太ると、上の葉が枯れてきます。
『葉タマネギ』は、球が太りきる前に、緑の葉が美しい状態で収穫したもの。『新タマネギ』は、球は十分太ったころ、上の葉が緑のうちに収穫して、葉を切り離したものです。だから、切り口が乾いていないことが多いんです」
一般的なタマネギは、緑の葉がしおれたころに収穫し、葉の乾燥を待って、球を切り離したもの。だから切り口が乾いています。
「『小タマネギ』だけ、作り方が少し違います。収穫の時期は同じなのですが、タネまきの時期を遅くし、生育を抑えています。しかも、隣どうし密に植えることで、球が大きく育たないように、コントロールするんですよ」
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2016年11月号より

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