渡辺明竜王と糸谷哲郎八段 早見えの強豪同士の対決

左/糸谷哲郎八段、右/渡辺明竜王 撮影:河井邦彦
第66回 NHK杯戦 2回戦 第5局は、渡辺明(わたなべ・あきら)竜王と糸谷哲郎(いとだに・てつろう)八段という早見えの強豪同士の対局となった。鈴木宏彦さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。


* * *


■注目の対決

渡辺と糸谷。注目の対戦である。「今の将棋界で早見えの強豪を3人挙げよ」と言ったら、ノータイムで羽生善治三冠、渡辺明竜王、糸谷哲郎八段の名前を挙げる人が多いはず。私もそうだ。その3人のうちの2人がこの2回戦で対戦する。もったいないというほかない。
先手になった糸谷は3手目▲7八金。もちろん、得意の角換わりを目指している。それに渡辺はピンと反応した。6手目△4四歩はいわゆる「うそ矢倉」。相手の狙いを外す方針ははっきりしている。


■トラウマ

両者の初手合いは2010年のNHK杯。当時五段の糸谷が渡辺竜王をがんがん攻めて圧勝した。両者の指し手があまりにも速いので放送時間が大幅に余った。そのときのトラウマが渡辺にはまだあるようだ。「糸谷さん? NHK杯戦では誰もが当たりたくない相手でしょう」と対局前の渡辺は言っていた。
低い構えの後手に糸谷は5筋位取りで対抗。▲3五歩はかなり積極的な動き。▲3五同角の瞬間、渡辺も△6五歩▲同歩△8四角と反発して激しいことになった。


■うっかり

△3九角成を防ぐのに、3図の▲5七角は超強気の対応。対して、「△7三角と引き、次に△5四歩を見る手はあったかもしれない。でも、まあ勢いなので」という後日の渡辺の感想がある。
実戦の△5七同角成〜△7三桂は最強の応手だが、そこで先手には▲6八飛と回る手があった。これを渡辺はうっかりしていたのである。次に▲6四歩が見えているから後手も動くしかない。△8六歩▲同歩△7五歩と進み、以下4図になった。ここが問題の局面である。


※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK将棋講座』2016年11月号より

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