初出場の本木克弥七段とシード棋士蘇 耀国九段が繰り広げた大流行の序盤

左/本木克弥七段、右/蘇 耀国九段 撮影:小松士郎
第64回NHK杯2回戦 第2局は本木克弥(もとき・かつや)七段(黒)と、蘇 耀国(そ・ようこく)九段(白)がぶつかった。佐藤康夫さんの観戦記より、息つく暇もなかった序盤の展開を紹介する。

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■ノンストップの攻防

初出場の本木克弥七段は1回戦で、関西棋院のベテラン清成哲也九段を相手に大技を決めた。お茶の間のファンに強い印象を与えたに違いない。前々期の伊田篤史八段と一力遼七段、前期の寺山怜四段と、初出場の若手が決勝に進出したNHK杯。その流れに乗るのは本木か、それとも芝野虎丸二段か。
NHK杯の1回戦シード棋士は14名いる。その中に蘇耀国九段が入っているということは活躍度の証明にほかならない。早打ちで乱戦を好む棋風は早碁棋戦にうってつけと言える。9月まで「楽に打てる石の感覚」講座を担当し、ふだんどおりの軽快な語り口で人気上昇中である。
解説の小林光一名誉棋聖は「若い本木さんがどんな碁を打ってくれるかに注目します。蘇さんがいかに受け止めるのか…。始めはおとなしめかもしれませんが、いずれ戦いの碁になるでしょう」と予想した。

■大流行の序盤

対局開始から早いピッチで手が進んだ。小林光一名誉棋聖が解説図を作る間が取れないほどであった。その理由は中国や韓国で大流行している布石=人工知能のアルファ碁と韓国のイ・セドル九段が対戦した五番碁の第5局と同一手順だからである。
小林名誉棋聖「アルファ碁には驚かされました。僕が生きているうちにあんなに強いものができるとはね」

白12のツケから16までは、相手を固めても惜しくないという超現代的な手法である。黒17で普通に18とノビれば、白Aと構えることになる。
黒21のハネから別の道に進んだ。アルファ碁の第5局では1図、イ九段は黒1と切って仕掛けた。 
小林名誉棋聖「黒21、23は大賛成です。なぜそう打たないのかと思っていたんですよ。本木さんが打ってくれてよかった」
黒25のワタリは冷静。この手でBとマゲれば、白C、黒Dに白Eと切って乱戦に突入することになるだろう。
小林名誉棋聖「黒25も賛成。辺の地を確保しながら、落ち着いた打ち方です。本木さんとは意見が合いますね」
■『NHK囲碁講座』2016年10月号より

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