カンカン先生と名うての厚み派・今村俊也九段のNHK杯1回戦

左/林 漢傑七段、右/今村俊也九段 撮影:河井邦彦
第64回NHK杯1回戦 第5局は、林 漢傑(りん・かんけつ)七段(黒)と今村俊也(いまむら・としや)九段(白)の対局だった。佐野 真さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■前講師、模範局なるか?

ご存じ「カンカン先生」こと林漢傑七段の登場である。
昨年10月から今年3月までの囲碁フォーカス講師として、知名度が一気にアップ。持ち前の明るさと、ブレのないまっすぐな精かんさ、そして天才的な話術で、瞬く間に囲碁ファンの心をつかんだ。今や碁界きっての人気棋士であることは間違いなく、先日は街中で「あ、カンカン先生だ!」と声を掛けられたそうだ。
もちろん本業の手合でも、着実に活躍の幅を広げており、NHK杯においてもすっかりおなじみの顔となった。これまでに名人戦リーグ入り、竜星戦準優勝などの実績があるが、32歳と中堅の域に近づいてきた現在、さらなる勲章が欲しい。
対するは、本トーナメントでも3回の準優勝経験がある、ベテラン・今村俊也九段。両者は本棋戦の第62回でも1回戦で対戦しており、そのときは林七段が白番中押し勝ちを果たしている。

■積極的に

組んでよし、離れてよしの自在派である林漢傑七段だが、本局では黒13に続いて15から21、さらには23、25と実利志向。相手が名うての厚み派である今村俊也九段ということで、「実利で先行して逃げ切る」プランということか。

と思われたのだが、白26に対する黒27のハサミは、積極的に戦いを仕掛けにいった手。黒29と受けて「右下で黒Aとスベる手があるので、右辺は白に構えさせてもいい」と考えるのが普通ではあったが「林さんは、右下の白を攻めるくらいの気持ちなのでしょう」と解説の横田茂昭九段。
白28から30のボウシは当然の行動だが、林は「黒31の一間トビから33とノゾき、進退に不自由することはない」と見ている。1図、白1のツギなら、黒2とツケる手がぴったり。白3から5、7がこうした際の形だが、△があるため黒8、10とツキ破ることができる。

ただし、白はあえて1図の白1とツイで黒2とツケさせ、そこで2図の白1と三々に入ることは考えられた。右上を応じていると中央に障ってくるので、黒は2とノビるくらい。「白3まで、こうするべきだったかな」と局後の今村は振り返っている。

※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2016年7月号より

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