有機野菜って何のこと? おいしいの?

なんとなく、よいイメージのある有機野菜。有機野菜が、どのように人や環境に影響しているのかがわかると、野菜全体への理解がぐっと深まります。

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■有機野菜って、何のこと?

―― 人だけでなく、 環境への影響も考えよう。
よくある誤解は、「有機というぐらいだから、肥料に有機物を使っているの?」というもの。たしかに化学肥料を使った野菜は有機野菜ではありません。有機農家の多くは、堆肥(たいひ)やぼかし肥と呼ばれる有機質から作られた資材を使っています。
もう一つは「無農薬で作られた野菜=有機野菜」。たしかに、栽培に化学合成農薬を使うと有機野菜とは呼べません。しかし、大切なことは、これらは有機野菜と呼ばれるための条件の一部でしかないことです。
では、なぜ化学肥料と化学合成農薬を使わないのでしょうか。人の健康にとってより安心で安全な野菜を求めてとも言えますが、もう一つは自然環境への影響を配慮してのこと。人の健康に直接害はなくても、環境を汚染したり、生物の多様性が失われたりすることで、農業が持続できなくなっては意味がありません。このような予防的な視点から、遺伝子組み換え技術を使ったタネを利用しないといったことも大切です。
 

■結局、有機野菜って、おいしいの?

―― 自分で栽培して確かめてみよう。
有機栽培で育ったトマトはおいしい、キュウリは風味が豊かだといった声をよく耳にします。有機栽培の野菜には、よい土に根を張って、ミネラルを含む栄養を広く集め、じっくりと育った野菜が多いのも事実。特徴が十分に発揮された有機野菜に巡り会うと、やはり「うまい!」とうなってしまいます。
しかし、同じ有機野菜でも、品種やその年の天候などによっても、野菜の味は大きく左右されます。有機栽培であることは、たくさんあるおいしさの条件のなかの一つ。「有機野菜ならすべておいしい」と言いきるのはちょっと無理があります。
論より証拠。本当に有機野菜がおいしいか、畑やベランダなどの身近な場所で栽培してみましょう。化学肥料、化学合成農薬を使わないのはさほど難しいことではありません。日当たり、風通しをよくして、肥料を与えすぎないように気をつけましょう。固定種や伝統野菜、地方野菜と呼ばれるものには、肥料分が少なくてもよく育つものがたくさんあります。これらのタネを適期にまくと、病害虫の被害も少なく、しかも、味のよい「旬の野菜」に育ちます。
身近で育てると、畑も同じ、品種も天候も同じ。そこで、化学肥料や化学合成農薬を使う一般的な栽培と有機栽培を比較してみてください。おいしさの軍配はどちらに上がるでしょうか?
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2016年7月号より

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