自治体も苦慮する土問題──土はどうして捨てられないの?

ウィステリアガーデンには「鉢ごと処分してほしい」という依頼もあるのだとか。撮影:藤井憲一
土の捨て方に困っているという声をよく聞きます。それによってガーデニングに不便を感じている人も多いようです。どういう理由で捨てられないのか、捨てられないならどうすればいいのか。都市部の現状を取材しました。

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■土問題は自治体も苦慮

「使い終わった鉢の用土、どうやって処分したらいいの?」
用土の処分は多くの園芸を楽しんでいる人にとって、共通の悩みかもしれません。実際、培養土を販売しているメーカーにも、問い合わせが多いそうです。
ゴミとして処分するのであれば、住居のある自治体に問い合わせるのが正解です。ただし、自治体によってその扱いはさまざまです。集合住宅が多く、日常的に多くのゴミが出る都市部の自治体を例に見てみましょう。例えば横浜市では、土を「ゴミ/廃棄物」として捉えていて、不燃ゴミとして回収しています。一方で、東京都世田谷区では土をゴミとしては回収していません。
世田谷区清掃・リサイクル部事業課の小川正紀さんによれば、「土は焼却できず、またゴミではなく自然にある物なので、世田谷区では回収していません。購入した園芸店などで引き取ってくれることもありますよ、とお伝えしています。また、土の回収業者さんをご紹介することもあります」とのこと。
埋め立て地が狭小な東京23区では、2005年にそれまで不燃ゴミだった廃プラスチックを埋め立てずに処理する方針を打ち出しました。土も不燃物として扱わないという事情には、得心がいきます。
 

■都市部には強い味方も

自治体に寄せられた多くの問い合わせを受けて、勤務先の自治体を辞め、土の回収業を始めた人がいます。土の回収業ウィステリアガーデン代表の藤井憲一さんは、東京都内を中心に業務展開し、都内の16市区町村から紹介を受けています。ここでは、不要になった園芸用の土や底石などを玄関先まで回収に来てくれるサービスを提供しています。当然有料なのですが、便利なサービスだといえます。
「園芸を楽しんでいる人からの依頼は、たしかにあります。が、引っ越しのために鉢ごと処分したいとか、マンションの大規模改修のタイミングで整理するための依頼などが多いですね」(前出・藤井さん)
ただし都市部以外では、土の回収業者の数は少ないようです。
■『NHK趣味の園芸』2016年4月号より

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