「土作り=肥料をたっぷり」は間違い! 土が不健康になると一体どうなる?

イラスト:山村ヒデト
これまで当たり前のように行われてきた土作りの方法は、じつは間違いだらけかも。おかげで土は養分過剰になり、土壌汚染や地下水汚染が深刻な問題になっています。土の不健康化は、じつは家庭菜園のほうが深刻です。あなたの菜園の土は、本当に大丈夫ですか? 東京農業大学名誉教授の後藤逸男(ごとう・いつお)さんがアドバイスします。

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「土作り」は、堆肥や肥料をたっぷりとまくことだと勘違いしていませんか? 普通は、畑の土に含まれている養分だけでは野菜の生育に足りないので、野菜を育てるのに肥料は欠かせません。しかし、栽培を始めるたびに機械的に堆肥や肥料をまいたり、「たくさんまけば、よく育つだろう」と多量にまいたりしていると、野菜が必要とする量を超えてしまいます。肥料のムダ遣いですね。
それだけではありません。野菜が吸収できなかった肥料は土の中にたまり、土が養分過剰になって土の体力(土力〈どりょく〉)を弱めてしまいます。また、雨水などによって地下にしみ込んで地下水を汚染したり、川や海に流れて栄養過多の原因になったりもします。「過ぎたるは猶(なお)及ばざるがごとし」で、さまざまなところに悪影響を及ぼすのです。
土が不健康になってしまった畑では、下記のようなさまざまな障害が発生してきます。肥料分が過剰にたまった土は、「肥えたよい土」とはまったく別物です。
正しい土作りとは、「健康な土を作る」こと。具体的には土の「物理性」「化学性」「生物性」を整えることです。土作りを始める前に、まず菜園の土壌診断を行って、土の「物理性」「化学性」「生物性」を見極めましょう。専門家に頼んだりする必要はありません。土壌診断は、自分でも意外に簡単に行えますよ。

■土が不健康になると、一体どうなる?

土壌病害が発生しやすくなる
土には、野菜が土壌病原菌に感染するのを防ぐ働きがあるが、土の体力(土力)が落ちたり、不健康になったりすると、土壌病原菌を抑えられなくなる。結果、野菜に土壌病害が発生しやすくなる。
地下水が汚染される
野菜に吸収されなかったり、土が蓄えきれなかったりした肥料分は、雨水によって地下に流れ込んで地下水に混じり、汚染する。土から地下水に溶け出した硝酸(しょうさん)イオンは、やがて川や海に流れ出て栄養過多の原因となる。
味がおいしくない
過剰な肥料分(主に硝酸態チッ素)までどんどん吸収するため、野菜に含まれる糖とビタミンCが減り、おいしくなくなり栄養価も下がる。場合によっては苦みも出る。
地上部がよく育たない
肥料分を過剰に吸収すると、野菜体内で代謝のメカニズムが狂い、生理障害が発生して生育が悪くなる。葉の色が悪くなったり、枯れてきたりすることもある。
有用な微生物が減る
野菜を連作(れんさく)すると土壌病原菌の数が増え、有用な微生物が減少する。また、化学肥料だけで野菜を栽培すると、土壌微生物のエサが減るため、微生物の数が減ってしまう。
根が水を吸えない
肥料は塩類なので、土に多く残ると塩類濃度が上がる。その結果、浸透圧が高くなり、根が水分をうまく吸収できない。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2016年1月号より

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