目隠し将棋で大盛り上がり! 将棋×サッカーコラボイベントin天童

目隠し将棋を指す西尾六段。松本くんの的確な寄せには感心しきりだった。文と写真:いしかわごう
将棋駒の産地として有名な山形県天童市。ここを本拠地とするJリーグクラブのモンテディオ山形が、9月12〜13日に「将棋×サッカーコラボイベント」を開催。5月の横浜F・マリノス戦に続き、今年2度目となるこの日も盛況となった

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■きっかけは野月七段

スタジアム周辺の特設ブースでプロ棋士と多面指しで対局する、モンテディオ山形のユニフォームを着用したサポーターたち――すっかり見慣れた、このイベントでの光景である。
今回参加した棋士は3名。企画の仕掛人でもある野月浩貴七段と、行方尚史八段、西尾明六段だ。特に東北出身の行方八段は、今年の名人戦に挑戦者として登場したということもあり、彼を目当てに足を運んだ将棋ファンも多かったようである。
もともとのきっかけは、無類のサッカー好きである野月が棋士仲間との旅行も兼ねたサッカー観戦で訪れた際に、たまたまクラブ関係者と交流を持ったことだったという。そしてさすが将棋の街。そこから話がトントン拍子に進み、コラボ企画の実現となった。今年で3年目を迎え、サポーターの間でも確実に定着しつつある。

■目隠し将棋に興味津々

2時間ほどの多面指しが終わると、西尾明六段と地元・天童の将棋少年である松本望くんとの公開対局が開催。手合いは飛車落ちで、西尾六段にはさらに目隠しのハンデが課せられた。
目隠し将棋は、将棋ファンにはなじみ深いイベントだが、サッカーファンにとっては「プロの凄(すご)技」である。盤面を見ず、読み上げられた符号だけで将棋を指していく西尾六段の姿に、通りがかるサポーターも興味津々といった様子だ。大盤解説では、野月七段と行方八段が「攻められているのに、ディフェンダーが攻め上がっていきますね」など、サッカーファンにもやさしい例え話で戦況を説明し観客を盛り上げる。気づけば、すっかり人だかりができるまでになっていた。

■見事な指し回し

対局は松本くんが「定跡をよく知っている指し方」(野月七段)で序盤から右四間飛車で優位に進めていく。対する西尾六段は思わぬ苦戦を強いられる。というのも、屋外でのイベントのうえ、スタジアムの入場時間と重なったため、対局中にBGMやアナウンスが大音量で響き渡り、指し手の読み上げが聞き取りにくい状態になってしまったのである。思わず指し手を聞き返すと、行方八段から「イエローカードが出ましたよ」と冗談で警告される一幕も。
ただそれを差し引いても松本くんの指し回しは堂々としたもので、5筋から的確な攻めを展開。終盤には2度の▲5六桂から銀を奪い、▲6四銀(1図)と鋭い寄せを見せる。1図以下△7一桂▲8四角△6四金▲同桂△6三銀と上手も必死に抵抗するが、▲5一銀△同玉▲5三金で、西尾六段もたまらず投了。
「終盤はよい手が飛んで来て、受けがきかなかったです。内容もよくて、今後が楽しみ」と勝った松本くんの攻め筋を褒めたたえていた。





■イベントは大成功

その後は「プロ棋士が読む!? 今日の試合展望」と銘打ったトークショーを経て、芝かぶり席で試合観戦。ハーフタイムに棋士を紹介するなど、あの歓迎ムードはさすがである。
翌日13日には、天童市内のイベントホールにて「ディーオカップ将棋大会」が開催。「ディーオカップ」は、モンテディオ山形のマスコットキャラクターから由来しており、開会式にはディーオも来場。参加者と将棋を指すなど場を盛り上げていた。将棋大会には約50名の子どもが参加。棋力により3部門に分かれて大会は行われ、王将の部では渡邉東英くん、金将の部では小林颯河くん、と金の部では石垣日向くんが優勝を果たした。
こうして2日間に渡ったコラボイベントも無事に幕を閉じた。初参加となった行方八段に感想を聞くと、「さすが将棋の街ですね。皆さん指導対局の行儀がよくて気持ちよく指導できました。将棋とサッカー、どちらも自分の好きなものですし、それがこういう形になるのはすばらしいので、今後も続けていってもらいたいですね」とご満悦だった。
天童の特色を生かした将棋×サッカーイベント。今後の定着と、来年に向けたさらなるパワーアップが楽しみである。
■『NHK将棋講座』2015年12月号より

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