前期「初出場・準優勝」の一力遼七段、2度目のNHK杯初戦に挑む

左/寺山 怜四段、右/一力 遼七段 撮影:撮影:小松士郎
第63回NHK杯テレビ囲碁トーナメントの2回戦・第5局を戦ったのは、一力遼(いちりき・りょう)七段と、寺山怜(てらやま・れい)四段。共に90年代生まれの若手棋士同士の対局となった。佐野真さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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前期のNHK杯で「17歳にして初出場・準優勝」の快挙を成し遂げた一力遼七段(今年6月で18歳になった)。決勝で伊田篤史八段に敗れたものの、それまでに破った相手が河英一五段、林子淵七段、河野臨九段、高尾紳路天元、井山裕太棋聖というそうそうたる顔ぶれ(肩書は対局当時)。特に準決勝で井山棋聖に真っ向勝負を挑んで読み勝った碁は、強烈な印象を残した。
読みの速さと正確さは誰もが認めるところで、瞬発力を前面に押し出した戦闘スタイルが、一手30秒の早碁で最大限に効力を発揮しているのであろう。
新人王戦、おかげ杯、若鯉戦、中野杯など、国内の若手棋戦で優勝を果たし、昨年は20歳以下の国際棋戦をも制した。日本が誇る若手の筆頭として、今後は一般棋戦での優勝、タイトル奪取が望まれる立場となっている。その第一歩となる今期の初戦。相手は6歳上の寺山怜四段である。

■1譜 黒に不満なし

寺山怜四段(黒)は24歳。過去に若鯉戦優勝、中野杯準優勝、新人王戦ベスト4などの実績がある。穏やかな風貌で、実際に人柄もそのとおりの人格者なのだが、加えて碁界きっての運動神経の持ち主でもある。野球選手として、相当な実力を有しているのだ。
特に内野手としての能力が群を抜いており、平均的な高校球児を上回る守備力を誇る。日本棋院野球部の主将を務めるかたわら一般クラブチームにも所属して腕を磨き、今なお成長中と言っていい。
そして野球以上に飛躍を遂げているのが本業である。昨年、名人戦と本因坊戦で最終予選にまで進出し、NHK杯初出場。棋風は本人いわく「戦う碁です」。

そのスタイルを象徴するかのように、黒5の三連星から31までの大模様作戦。白32と右辺に入らせ、この石を攻めることで主導権を握ろうという方針だ。黒37のカドも力強い。1図の白1なら黒2とオサエ込み、丸ごと追い出して攻める意図である。ゆえに一力遼七段は白38とかわしたが、再び黒39のカドから41と急所に迫り、追及の手を緩めない。
白42に2図、黒1の切りは白2から6と、△(黒丸に白抜き)を切り離されて芳しくない。そこで黒43のツギから45と戻った。白32を飲み込んで右辺を確定地とし、寺山は「これでいける」との手応えをつかんでいた。

※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2015年11月号より

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