初代小学生名人からプロへ……横田茂昭九段の少年時代

撮影:小松士郎
関西の中核を担う一流棋士として活躍を続ける横田茂昭(よこた・しげあき)九段。ファンの間では、2009年NHKテレビ講座の講師としての印象が強いであろうか。その後、本誌での連載講座が大いに好評を博したことも、記憶に新しい。
棋戦実績としては、何と言っても2007年の碁聖挑戦が輝きを放っている。挑戦手合では0勝3敗で張栩碁聖(当時)に敗れたものの、「関西棋院に横田あり」を知らしめた、見事な活躍だった。
その横田が初めて名を知らしめたのは小学校5年生のとき。この年に初めて開催された少年少女囲碁大会で優勝し、初代小学生名人の座に就いたのだ。当時の思い出を聞いた。

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■小学生名人からプロの道へ

第1回大会でしたから、大会のレベルはもちろん、誰が強いのかも分かりません。観戦している大人も「どれだけ打てるのだろう?」という人が多かったように思います。私自身も「優勝しよう」などとは、全く思っていなかったですし…。
それでものちになって振り返ってみれば、ベスト8のうち6人がプロ入りしています。決勝の相手だった斎藤正くん(現関西棋院八段)をはじめ山田和貴雄さん、青木喜久代さん、原幸子さん、三村智保さん。そして私の棋力は当時、アマ六段くらいだったでしょうか。プロに三子では勝てないという感じでしたから。
翌年は新垣朱武くん(現関西棋院九段)に決勝で負かされて準優勝。4年生のときから赤木一夫先生(故人=関西棋院八段)に弟子入りしていたので、プロになることを漠然と考えてはいましたが、2年連続で優勝、準優勝できたことで、6年生の少年少女大会が終了後、自然と院生になりました。
当時の私は岡山に住んでいたので、院生手合で大阪に出て行くのが楽しくてしかたがなく、まるで旅行のような感覚がありました。だからだったのでしょうか、入段試験でも全く肩に力が入ることなく、約1年半、14歳で入段をかなえることができました。
よくプロは「入段を決めたときがいちばんうれしかった」と言いますが、私の場合は割とあっさりだったので、そうでもなかった。ですから今、院生の子たちを指導する際に、引け目のようなものを感じてしまうのです。
その代わり、プロとなっての初手合を勝ったときは、本当にうれしかった。あれは大きな思い出です。あの緊張感とホッとした気持ちは忘れられません。
私の3年前に今村俊也さん(現九段)が入段していて、すでに活躍していましたし、私の半年後には結城聡くんというすごい人が入段してきました。だから私もそこそこ勝っていたのですが、ほとんど注目されていませんでした。
特に結城くんはですね、院生のころに最初は彼の三子で対戦して、そのときは「まだ大したことないな」と思っていたのですが、3か月後には向先で負かされましたからね。「こりゃすごいのが出てきたぞ」と思ったものです。
■『NHK囲碁講座』2015年10月号より

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