イチゴの旬っていったいいつなの?

戦後の高度経済成長期、イチゴで飾られたクリスマスケーキは多くの人にとって憧れで、この時期にイチゴを出荷できるよう様々な工夫が行われた。イラスト:齋藤俊之
クリスマスシーズンに向けて、イチゴが店頭に並ぶ季節がやってきます。しかしイチゴ狩りが盛んなのは春。イチゴの旬はいったいいつなのでしょうか。

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5月のイチゴも、クリスマスシーズンのイチゴも、どちらも旬と言えます。
その理由は、イチゴの生態とプロ農家の栽培法を理解することでみえてきます(下のイチゴ栽培暦参照)。イチゴはランナーと呼ばれるほふく茎(ほふく枝)によって栄養繁殖し、開花・結実を繰り返す多年生の作物です。
そこで、1年間のイチゴの生育を自然条件の中でみてみましょう。日が長く、気温が高くなる5〜6月頃からランナーを盛んに発生させ子株を作ります。よく育った子株は気温が下がり日長が短くなる9、10月にクラウンと呼ばれる短縮茎の先端(成長点)に花芽をつけ、その後気温の低下とともに発育が停止して休眠に入ります。
十分に低温にあたったあと、気温の上昇する春になると休眠から覚醒し、生育が始まると葉や花芽が動きはじめます。そして4月ごろから開花が始まり5〜6月に結実し、収穫が行われます。自然条件下でのイチゴのこのような特徴から、5月が旬になるのです。
ところが、スーパーなどにイチゴが並び始めるのは11〜12月です。冬の果実として認識している人も多いのではないでしょうか。じつはこれは、早生(わせ)品種を利用した促成栽培によるイチゴで、クリスマス需要などにあわせて旬を迎え、店頭に並びます。

■『NHK趣味の園芸やさいの時間』2015年10月号より

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