山崎隆之八段、羽生善治名人からの意外な質問に苦笑

山崎隆之八段 (写真:河井邦彦)
今月の「知っている/知らない」にご登場いただくのは、「将棋フォーカス」で総合司会を務める山崎隆之(やまさき・たかゆき)八段。棋風と同じく、語りも非常に個性的で、ユーモアあふれるお話をうかがいました。あなたの知らない魅力にどこまで迫れるでしょうか?

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■羽生善治名人より山崎隆之八段への質問

Q 山崎八段の師匠の森信雄七段はどんな先生ですか?
将棋で弟子を取ることって、別に金銭的なメリットがあるわけでもなくて、気苦労が10割、みたいな世界だと思うんですよ。返ってくるものが何もないということはないんでしょうけど、基本的には、弟子を取るというのは、「将棋界への恩返し」という気持ちがなければできないことだと思います。
将棋界に「いい人」はたくさんいると思うんですけど、師匠は「あったかい人」というのがしっくりくる感じですかね。師匠に対して言うのは失礼かもしれないんですが、「この人はなんで勝負の世界にいるんだろう?」ということが不思議になってしまうというか。自分も厳しいことを言われたこともありますよ。「もう面倒を見きれないから破門だ」とか。そんなときも完全に見限るのではなくて、助け船を用意してくれていましたけど。だから、人を斬る……真剣で人を斬る、じゃないですけど、人を傷つけるようなことはできない人なんじゃないかなと思うんですよね。
森門下の棋士は多いですけど、同門で仲良くしているかといったら、別にそんなこともないですね(笑)。一門会とかは師匠がリーダーシップを取ってやっているという感じなので。だから、「みんなで肩を組んで」みたいな雰囲気というのは、ほかの先生のところよりも、ひょっとするとないかもしれない。そもそも師匠の教えが「狎(な)れあうな」というものなんですよ。この言葉が師匠から出てきたこと自体不思議というか、師匠だけの考えなのか分からなくて。村山先生(故・村山聖九段)の影響なんじゃないかと思ってる部分もあります。森先生のなかにも元々そういう部分があって、それが村山先生との暮らしのなかで引き出されたとか、そういうこともあるかもしれないんですけど。とにかく師匠と村山先生はもうお互いにすごく影響しあっていて、どの部分が師匠が本来持っていたもので、どの部分が村山先生の影響を受けたものなのか、たぶん溶けあってしまって本人も境目が分からないんじゃないかと思うくらい、あの二人の関係は特別なので。
村山先生は、僕が最初に会ったときはもうトップ棋士だったので、兄弟子というよりも、近づきがたい方という印象でした。将棋も何局か教わりましたけど、「将棋を指した」というよりも「将棋で遊んでもらった」という感じで。自分がもっと早く強くなって、真剣勝負まではいかなくても、ちょっとでも本気を出してもらえるくらいのところまで行けたらたらよかったなと思うことはありますね。
Q 地元の広島のおすすめの食べ物はなんですか?
え。なんですかその質問は? はぁ、羽生先生は根性ある人にしか興味ないからなあ。分かってるんですけど、寂しいなあ(苦笑)。これは、お好み焼きですね。小学校低学年くらいから道場(故・本多冨治氏が開設した広島将棋センター。現在は移転)に通い始めて、終わると下のお好み焼き屋さんで食べていました。週の半分くらいは道場に行ってて、その帰りには必ず食べていたんで、すごい回数通ったはずです。
Q 好きな色はなんですか?
は? 色ですか? 色ねえ……。昔は紫が好きだったんですけど、今は白か黒かなあ、あこがれるという意味も含めて。これ今日の気分ですよ。昨日聞かれてたら違う答えだったと思いますけど。白はなんにでも染まれる色というか、あこがれですよね。でもどっちかと言えば黒かなあ……。陰影をつけたり削ったりするとすごくかっこいいんじゃないかなと思ったりしますね、黒。黒になりたいです。
■『NHK将棋講座』2015年7月号より

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