30年前とは様変わり! 現代テニスは別のスポーツ

現代のラケットはラクにショットが打てるようにった。撮影:鯉沼宣之
今、日本では、錦織圭(にしこり・けい)選手やクルム伊達公子(だて・きみこ)選手をはじめとするたくさんの選手の活躍で、テニスブームが再到来しています。
元プロテニスプレーヤーで、現在はワールドジュニア日本女子代表監督を務める神尾 米(かみお・よね)さんは、「20年前、30年前と現代とでは、テニスの常識や技術が様変わりしました」と指摘します。どこが変わったのか、現代のテニスの特徴を神尾さんにうかがいました。

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■現代テニスは高速&高回転

錦織圭選手の活躍で、日本ではテニスが注目されています。地上波でテニスの大会が放送されるようになり、久しぶりにテニスの試合を見た人も多いのではないでしょうか。
現代のテニスを見て、「ずいぶん変わったな」と驚いた人も多いかもしれません。
ポイントの数え方やコートの大きさといった基本的なところはもちろん変わらないのですが、テニスのプレースタイルが大きく変わり、違うスポーツといっていいほどになりました。
今から30年前の1980年代には、ビヨン・ボルグやジョン・マッケンロー、ステファン・エドバーグといったサーブ&ボレーを得意とする選手たちが多く活躍していました。サーブ&ボレーとは、サーブを打ってすぐに前に走り、返ってきたレシーブをボレー(ノーバウンドで返球)するプレースタイルです。当時のラケットでは、速いボールを打つのには限度があったので、前に出てテンポを速くする必要があったためです。
そこに、「ブンブンサーブ」で有名なボリス・ベッカーが登場し、テニスの高速化がはじまります。
90年代になると、ストロークでもスピードが出せるようになり、ピート・サンプラスのように、どのショットも非常にパワフルに打てる選手が強さを発揮します。
ショットの強さだけではなく、今度はフットワークのよい選手たちが登場するようになり、ロジャー・フェデラーのようなオールラウンダーが生まれました。
そして現代では、さらにテニスが進化し、すべてをそつなくこなした上で、より高速で回転のかかるストロークが打てるなど、さらになにか得意なものがないとトップになれない時代になっています。

■ボールを飛ばしてくれる現代ラケット

これらの変化をもたらした根底にあるのが、ラケットの進化です。
以前は自分からボールを「打ちに行く」必要がありました。しかし現代のラケットは「ラケットが打ってくれる」のです。
飛ばないラケットの時代は、フラットやスライスが主流でした。しかしラケットがボールを飛ばしてくれるようになると、そのまま打つとアウトになってしまうため、回転をかけてボールをコート内に落とさなければいけないようになりました。
現代のラケットは、速いボールを打つだけではなく、よりスピンがかかるように設計されています。
各ラケットメーカーは、ボールがラケットに当たる瞬間(インパクト)の衝撃をいかに吸収するか、ラケットのふらつきをいかに抑えるか、ボールの飛びをいかによくするかなど、テニスのプレーにまつわる悩みをさまざまなアプローチから解決しようとしのぎを削っています。
以前は、速いボールはフラットで打つ必要があり、回転をかけるとスピードが落ちるというのが常識でしたが、現代では、強く回転をかけ、かつ高速のボールが打てるようになりました。そしてエッグボール(高速かつ高回転のスピンボール)のような新しい球種も登場しました。以前に比べて、より多彩なボール運びでプレーができるようになっています。
■『NHK趣味どきっ! 現代テニスで再デビュー ラク楽“エース”を決めよう』より

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