よけいなものは入れず丁寧に──柳原家のぬか漬けの極意

1日1回は手で混ぜるのが鉄則。撮影:久間昌史
発酵させたぬか床に季節の野菜を漬け、そのうまみをしみ込ませるぬか漬け。ほっとする味わいはもちろん、ぬか床を育てる苦労や楽しさも、ぬか漬けの醍醐味(だいごみ)です。
ここでは、江戸懐石近茶流宗家の柳原一成(やなぎはら・かずなり)さん、江戸懐石近茶流嗣家(しか)の柳原尚之(やなぎはら・なおゆき)さんが、柳原家に伝わるシンプルな漬け方をご紹介します。

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柳原家にあるぬか床を手入れしているのは、主に父の一成さんと息子の尚之さん。ぬか漬け歴50年以上という一成さんは、父で先代の江戸懐石近茶流宗家、敏雄さんから受け継いだ漬け方を今も守っています。
「父から言われたのは、よけいなものを入れず、丁寧にぬか床を育てなさい、ということ」
その言葉どおり、柳原家のぬか床はいたってシンプル。抗菌のための赤とうがらしは入れますが、そのほかの素材は、雑菌が入りやすくなるため、ほとんど加えません。
「その分、手をかけてじっくりぬか床を育てています。繰り返し手で混ぜることで、不思議とその人の味になっていくんですよね」
一方の尚之さんは、大学で学んだ発酵学を生かし、ぬか床の中にいかにいい乳酸菌を育てるか、ということに重きをおいているそう。
「常にぬか床のご機嫌を伺い、乳酸菌が元気にしているかどうかを気にしています(笑)。でも、漬け方は父譲りのシンプル派。そのほうが、発酵学からみても理にかなっているんです」
父の経験と息子の知識からつくられるぬか漬けは、柳原家の日々の食卓に欠かせません。
■『NHKきょうの料理』2015年6月号より

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