炭手前の大きな特徴とは

客一同がそろって炉を拝見する様子 撮影:宮村正徳
炉の炭点前では、点前の途中で炭の拝見と、点前が済んでから、香合の拝見があります。武者小路千家 第14代家元 千宗守(せん・そうしゅ)さんに解説していただきました。

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一碗の濃茶をいかにおいしく召し上がっていただくかが、茶事の主眼です。濃茶を点てるのに最適な湯の温度は、茶の味や香りを損じる沸騰の絶頂ではなく、それを過ぎて少し下り坂の煮え加減のときで、これを「松風」といいます。炭点前は、濃茶点前が松風の湯相(ゆあい)で行われるための準備の仕事です。
炉の炭点前の大きな特徴は、亭主が炭をついでいる最中、客が炉のそばまで進み出て拝見をする点にあるでしょう。炉という小さなスペースの周りに寄り合って亭主が炉中に炭を置くのを拝見することにより、主客に親密な空気が流れます。
今回は、三月ごろに好んで使われる透木釜を使用しました。透木釜は、炉の中に五徳を据えず、炉壇(ろだん)に置いた透木に釜の羽を掛けて使います。釜が炉を覆うように掛かり、炉の中の様子が隠れて見えなくなってしまうので、寒さがゆるんで春の陽気が増し、炉中の火がわずらわしく感じられるこの季節にふさわしいとされています。
■『NHK趣味Do楽 茶の湯 武者小路千家 春の茶事を楽しむ』より

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