佐藤康光九段が教える 確実な「詰み」を逃さないコツ

左/藤田綾女流初段、右/佐藤康光九段 撮影:藤田浩司
新年度となり、Eテレで放送中の『将棋フォーカス』、テキスト『将棋講座』の講座もリニューアル。4月からは、「佐藤康光の勝つための詰みのセオリー」がスタートします。講師の佐藤康光(さとう・やすみつ)九段と聞き手の藤田綾(ふじた・あや)女流初段に、講座のねらいをうかがいました。

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■「勝つ」ための「詰み」

佐藤 NHKでの将棋講座を担当させていただくのは、1995年の「囲いの急所 寄せの急所」、2007年の「基本でステップアップ」に続いて3回目になります。今回は、「勝つための詰みのセオリー」と題して、終盤戦のなかでも特に「詰み」に関することに絞って解説していきたいと考えています。
藤田 テーマを「詰み」に絞られたのは、どういった理由からですか?
佐藤 アマチュアのみなさんの多くが、「詰み」について苦手意識を持っているのではないか、と思ったことがきっかけですね。たとえば、指導対局をしていると、かなり優勢になってからでも、勝つまでに時間がかかってしまうアマチュアの方がいらっしゃいます。具体的には、私(上手)の玉に詰みがある局面でも、詰ますことができず、ほかの手を指して将棋が長引いてしまう、という状況ですね。
藤田 アマチュアの方、特に覚えたばかりの方は、駒を取るのは上手になったけど、駒を取って終わり、あとはどうしていいか分からない、ということがけっこうあると思います。なので、詰みをしっかり教えてもらえる講座はうれしいんじゃないでしょうか。
佐藤 相手の囲いを崩すとか、玉に迫っていく「寄せ」の段階というのも、難しいものではあるのですが、なかでも「詰み」に関して、基本的なことをしっかりお伝えしたいと思いました。
「詰み」についての講座というと、詰将棋を連想される方が多いと思いますし、終盤力の強化に詰将棋が有効なのは疑うべくもないのですが、実戦で相手を詰ますときにまず必要なのは詰将棋のような華麗な捨て駒ではなく、実は着実に相手の玉を追いつめていくことなんですね。有段者の方の言葉でいえば、「並べ詰み」を確実に詰ますことができるようになるだけで、勝率はすいぶん変わってくるんじゃないかと思います。
この講座で、そうした確実な「詰み」を逃さないコツを身に付けていただければ、と考えています。

■実戦での「詰み」の発見

佐藤 さらに言いますと、有段者の方でも、3手詰や5手詰を見逃してしまって詰ますことができない、という場面はけっこう見かけます。その局面と同じ状況を問題として出されれば解けるようなものであるにもかかわらず、です。
プロの対局では、詰めろ(次に自分の手番が来たら詰ましますよ、という手)がかかったらそれを受ける、というやりとりでだんだん勝負が煮詰まっていくのですが、アマチュアの方の将棋では、詰めろに気づかずにスルーしてしまうようなことがよくあります。ですから、詰みについてしっかり考えることで、「ここは詰みがありそうだ」という感覚を身に付けていただきたいというのも狙いのひとつです。
藤田 実戦では詰みがあるかないか、教えてもらえるわけではないですもんね。
佐藤 プロでもまれに詰めろに気づかないことがあります。実は私自身も昨年、公式戦で2回トン死の負けを経験していまして…それがきっかけというわけでもないんですが(笑)、「詰み」の基本について、もう一度、初心に戻って考えてみたいと思うようになった、ということもあります。
藤田 佐藤先生でもうっかりがあるんですね。

■スタートとゴール

佐藤 講座をどこから始めるかですが、覚えたばかりの方ですと、そもそも「詰み」というのがどういう状態か、ということの理解自体が難しいということもあるかと思います。ですので、まずは「詰んでいるとはどういう状態か」というところから話を始める必要があるのかな、と思いました。
藤田 ということは、対象は初心者・初級者の方になりますか?
佐藤 4月号は特にていねいに解説していますので、ルールを覚えたばかりという人でも理解できると思います。手数でいうと、最大で3手読めれば重要な部分は理解できます。5月号では、7手くらい読む必要がある例題を考えていくことになります。だいぶレベルアップすると思います。
藤田 だんだん難しくなっていくんですね。
佐藤 そうですね。予定の段階ですが、6月号では詰ましやすくするための捨て駒という考え方を扱う予定ですので、そこでまたグッとレベルが上がると思います。
藤田 最終的にはどのくらいのレベルになりますか?
佐藤 実戦を題材にして、有段者の方でも考えてしまうような例題も解説したいと考えています。4月号の内容がちょうどよい、という方には、理解するのがたいへんな部分も出てくるかもしれません。でも、狙うのは「詰み」なので、基本的には、「とりあえず王手をかけてみよう」といった感じで、楽しみながら考えていただくことができる内容にしたいと思っています。
藤田 私も楽しみにしています。半年間、よろしくお願いいたします。
■『NHK将棋講座』2015年4月号より

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