パン好きさん必読 「え? 西日本のメロンパンって...」
- 『おかしなパン: 菓子パンをめぐる おかしくてためになる対談集』
- 池田 浩明,山本 ゆりこ
- 誠文堂新光社
- 1,620円(税込)
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2016年、3日間で約12万人の動員を記録したという、パン好きのパン好きによるパン好きのための祭典「パンのフェス」。全国から人気のパン屋が一同に集結し、さまざまな種類のパンを楽しむことのできる、日本最大級のパンフェスは、今年も横浜赤レンガ倉庫前イベント広場にて、3月3日から5日まで開催されました。
いまやフェスが開かれるほどの日本の多種多様なパン。そのなかでも"菓子パン"に注目したのが、本書『おかしなパン』です。
パンライターであり、パンの研究所「パンラボ」を主宰する池田浩明さんと、菓子・料理研究家の山本ゆりこさんが、あんぱん、クリームパン、メロンパン、ジャムパン、ブリオッシュ、シナモンロール、マフィンといった、いわゆる私たちが"菓子パン"と呼んでいるパンについて、その起源、オススメのお店や食べ方などを存分に語り明かしていきます。
日本における"お菓子なパン"は、いまから約140年前、1875年4月4日に、銀座木村家が"桜あんぱん"を誕生させたことにはじまります。「最初にパン屋を開店したとき、パンが売れなかったので、饅頭に寄せることで日本人がイメージしやすい食べ物にした」(本書より)とのこと。
しかし本書によれば、このあんぱんやクリームパンのように、具をパンのなかに入れたパンは、「饅頭の延長で日本的なパン」のため、海外ではあまり受け入れられないのだそう。いい意味で「日本人にしか理解できないおいしさ」を秘めた食べ物なのではないかといいます。
あるいは、2014年に山崎製パン株式会社から「メロンパンの皮焼いちゃいました。」という、メロンパンの皮に特化した商品が発売されるなど、その"皮"のカリカリさも愛される要因である、メロンパン。
メロンパンといえば、丸い形で上に格子模様の入っている姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、西日本の一部では、メロンパンはラグビーボール型。「日本に古くから伝わっていたマクワウリというタイプのメロンはラグビーボール型」(本書より)だったため、メロンパンといえばラグビーボール型のものを指し、丸い形のものは、「サンライズ」と呼ばれ売られているのだそうです。実際、広島を発祥とし、今では日本全国にあるパン屋「アンデルセン」では、メロンパンはサンライズとして売られているそうです。
あんぱんやメロンパンなど、独自のパンを次々と生み出していく日本。池田さんと山本さんは、日本は「パンのガラパゴス」であると表現します。
「日本人の食に関する創作意欲はものすごいものがあります。かつての日本ではパン屋はお菓子屋を兼ねていました。パン生地とお菓子の生地が同じ厨房に混在していたので、両方を重ねるハイブリッドスイーツが次々と誕生したのだと思います。たくさんのパンが淘汰されていく中、日本人に支持されたメロンパンやいくつかのパンが生き残ったのだと(中略)...日本は欧米と違う、独自の展開をしたパンのガラパゴスだと思っています」(本書より)
次回のパンフェスはもちろん、本書には140軒ものパン屋情報も記されているので、気になるパン屋に足を運んでみるのも楽しいのではないでしょうか。