幕末から現代まで、日本のパンの歴史ってどうなってる?
- 『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか―パンと日本人の150年 (NHK出版新書 501)』
- 阿古 真理
- NHK出版
- 842円(税込)
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上賀茂神社の境内に人気ベーカリーが集結するとあって、2015年には約5万人が来場するほどの盛り上がりをみせた"京都パンフェスティバル"が、今年も10月29日、30日に開催されます。
今やパンイベントの盛況ぶりには目を見張るものがあり、2016年3月11日〜13日にかけて、横浜赤レンガ倉庫前広場にて開かれた"パンのフェス2016"では、約12万人が来場。人気の店のブースには長い行列ができ、早いところでは1〜2時間で完売する店も。
昨今の日本は"パンブーム"の渦中にあると語るのは阿古真理さん。阿古さんの著書『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』では、西洋のパンを日本がどのように受け入れ、約150年をかけ如何なる発展を遂げていき、パンブームが巻き起こるまでになったのか、その過程を明らかにしていきます。
日本において、パンづくりが本格的にはじまったのは、兵糧としての可能性が注目された幕末。携帯に便利、保存性も消化もよく、どこでもすぐに食べられるとして、戦場で摂り入れられたパンは、時代が進むにつれ米の代用食としても注目されていったのだといいます。
そんななか、日本生まれの、日本人好みのパンも登場。日本人がパンを受け入れるきっかけとなった、銀座木村屋の創業者・木村安兵衛による"あんパン"の発明にはじまり、"ジャムパン""クリームパン"などが生まれたのだそうです。
1900年、戦時携行食の研究をするため、陸軍が東京のパン屋、菓子屋の協力を得て、ビスケットをつくる東洋製菓を立ち上げ、東京・御殿場に工場をつくることに。そこでビスケットにジャムを挟む工程を眺めていた、銀座木村屋の木村儀四郎が、あんこの替わりにジャムをパンに挟む方法を思いついたそう。「当時ポピュラーだったあんずジャムを挟んで銀座木村屋で販売したところ、予想以上のヒット商品となり全国に広まった」(本書より)のだといいます。
さらに、新宿中村屋の創業者・相馬愛蔵が1904年に発明したのがクリームパン。シュークリームをはじめて食べ、あまりの美味しさに驚いた相馬は、そのクリームをあんこの替わりに用いることを思いついたのだといいます。
餡とパン、ジャムとパン、クリームとパン――阿古さんは次のように指摘します。
「混ざる楽しみをご飯で知っており、かつ積極的に西洋の食文化を取り入れカスタマイズさせてきた国だからこそ、多彩な惣菜パン、菓子パンが生まれたとは言えないだろうか」(本書より)
幕末から現在のパンブームにいたるまで、パンの歩んできた道のりを本書にて辿ってみませんか?