賞味期限が近付いている食品を買ったほうが良いって本当?

賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか (幻冬舎新書)
『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか (幻冬舎新書)』
井出 留美
幻冬舎
842円(税込)
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 「生みたて卵」、「朝採り卵」。スーパーなどでよく見かけるこんなセリフにつられて、賞味期限が一番遠い日付の卵を買っていませんか? でも実は、卵は冬場なら57日間も生で食べられるうえ、フランスでは少し寝かせた卵の方がおいしいと言われているのです。

 日本の卵の賞味期限は、パック後14日間となっていて、これは夏場の気温が高い時期に、生で食べることを前提にしています。本書『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』の著者・井出留美さんが確認したところによると、加熱調理が当たり前のフィリピンでは、卵の賞味期限は1カ月半というものもあったとか。海外では、卵の賞味期限はもっと長いのが普通のようです。

 「採卵日から10日ほど経った卵は、『す」(茶碗蒸しなどにできる、ポツポツとした気泡)の原因になる二酸化炭素が抜けているため、ゆで卵や目玉焼きにしたとき、プリプリの食感が楽しめるのだそうです」(本書より)

 また、日本では賞味期限の手前に、販売店が設けた「販売期限」があり、賞味期限の前に棚から下げられてしまいます。その後捨てられてしまうのか、惣菜として加熱調理されるのかは、それぞれの店によって違うようですが、私たちが漠然と抱いている「賞味期限切れの卵は食べられない」というイメージは間違いであると、「食品ロス」問題に詳しい著者は述べています。

 「食品ロス」とは、生産・製造されたものの、人の口に入ることなく廃棄される食品の事です。常にスーパーの棚をいっぱいにしておくために作られる過剰な量の食品、安全性を過剰に追求した結果、不必要なほど短く設定される賞味期限、廃棄費用を含んで設定される商品価格など、本書には、現代日本が抱える「食品ロス」についての様々な問題が提起されています。

 日本ではクリスマスやお正月、節分と季節のイベントのたびに、特定の料理や食品を食べる習慣があり、イベントが終わると、売れ残った大量のケーキやおせち料理などは、賞味期限に関係なく、ほとんどが廃棄されることも大きな問題と言えるでしょう。

 本書によれば、日本の食品ロス量は、632万トン(2013年度、農林水産省調べ)。世界の食糧援助量は約320万トン(2014年)ですから、日本は世界全体で支援される食糧の約2倍もの量を、国内だけで捨てていることになります。

 「これは明らかに異常な数字です」と著者は警鐘を鳴らしています。

 「みなさんに行動に移していただきたいのは、『賞味期限が近づいている食べ物を買う』そのことに尽きます。(中略)割引シールが貼られている商品だったら、買った人の家計が助かります。賞味期限の順番通りに買ってもらえれば、売れ残りによる廃棄が減り、店やメーカーが助かります。生ゴミの処理費用が減り、自治体や企業が助かります。社会全体も、食品ロスが減って環境負荷が減り、助かります」(本書より)

 今、私たちが享受している豊かな食生活を未来の世代に残していくためにも、「食品ロス」について知り、どうしたら減らしていけるかを考えていきたいもの。食を通じて「人としてできること」を見つめてみることが必要とされているのかもしれません。

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