トランプ大統領はなぜ支持されたのか 目指すのは「普通の国」?
- 『「トランプ時代」の新世界秩序(潮新書)』
- 三浦 瑠麗
- 潮出版社
- 820円(税込)
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2017年1月20日、第45代アメリカ合衆国大統領に就任した、共和党のドナルド・トランプ氏。多くのメディアや識者の予想に反し、いったいなぜトランプ旋風は巻き起こり、時代に必要とされたのか――。
国際政治学者で、東京大学政策ビジョン研究センター講師である三浦瑠麗さんによる本書『「トランプ時代」の新世界秩序』では、アメリカに生きる人びとが抱える不満や不安を現地取材を交えながら浮き彫りにし、なぜトランプ氏は支持されたのかを理解する大きな手がかりを示してくれます。同時に、これからトランプ氏が行っていくであろう外交政策のポイントをわかりやすく指摘。中でも安全保障について、日本はどのような姿勢をとっていくべきか、提言がなされています。
トランプ氏の外交政策――その核のひとつとして三浦さんは、「孤立主義」をあげます。トランプ氏は「イラクや中東のゴタゴタに巻き込まれるくらいなら、アメリカ国内のインフラ整備や公衆衛生を優先するべきだった」(本書より)という発想の持ち主であり、そうしたトランプ氏の存在に引きずられる形で、「共和党全体が孤立主義的な方向へと傾いていっている」(本書より)と三浦さんは分析。
「アメリカ外交は孤立主義的な傾向(≒モンロー主義)と、世界に積極的に関わっていく理想主義的な傾向(≒ウィルソン主義)の間で揺れ動いてきたとよく言われます。トランプ外交によって、このバランスが大きく崩れる可能性が出てきたのではないでしょうか」(本書より)
第一次世界大戦の戦後処理をウィルソン大統領が仕切って以来、100年間続いた「帝国としてのアメリカが仕切る世界」(本書より)。三浦さんは本書の中で、オバマ外交は「帝国としてのコストやリスクを負うことには消極的」でありながらも、「帝国としての地位は手放さない」ことを目指していたため、そこに本質的に無理が生じていたのに対し、トランプ外交は「帝国としての外交」ではなく「普通の大国としての外交」を目指すことにより、「オバマ外交の中途半端さを、ある意味で開き直ることによって塗り替えることになるのかも」しれないと指摘しています。
アメリカの政治の実情を知り、それを受けトランプ氏は具体的にどのような政治を目指し、日本にはどのような影響があるのかを分かりやすく分析している本書。今後日本にも密接に関係してくるトランプ政権下の外交政策、本書にて学んでおく必要は大いにありそうです。