「いまだに迷子」 ユウキロックが明かす「これまで」と「これから」

芸人迷子
『芸人迷子』
ユウキロック
扶桑社
1,404円(税込)
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 今年も12月18日に開催される『Cygames THE MANZAI 2016 プレミアマスターズ』(フジテレビ系)。「M‐1グランプリ2016」で王者となった銀シャリをはじめ、トレンディエンジェル、千鳥、爆笑問題、中川家など豪華メンバー約20組が集います。

 2013年、この『THE MANZAI』で決勝に進めなければ"解散"と覚悟を決め出場した一組のコンビがいました。第1回「M‐1グランプリ」準優勝、第4回「爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝など輝かしい実績をもち、2000年代のお笑いブームをけん引するも2014年に解散した「ハリガネロック」です。

 そんな元ハリガネロック・ユウキロックさんの著書『芸人迷子』には、こう当時の心境が綴られています。

 「『生き残る』ためのネタから『悔いなく辞める』ためのネタへ変わっていった。もうこの時点で俺の漫才人生は終わっていたのかもしれない」(本書より)

 その予感は現実のものとなり、2013年の『THE MANZAI』ではハリガネロック結成以来、自身が「過去最高にスベッた」と表現するほどの漫才に終わり2回戦で敗退。その後、解散へと動き出し、こう自らのキャリアを振り返ります。

 「技術がなかった俺には力ずくで『主観』をぶつけるしかなかった。しかし、世間はそれだけでは振り向いてはくれない。(中略)技術も向上し『主観』と『共感』のバランスを考えて戦略的にネタを作った。外での結果も得られたが、徐々にバランスがおかしくなり、そして、俺は解散する」(本書より)

 そんな苦悩の末に解散の道を選んだユウキロックさん。しかし、積み上げてきた20年のキャリアを「振り向く」のではなく「背負う」ことを覚悟し、現在は「育成」に力を入れているようです。

 解散直後は「演芸インストラクター」を名乗っていたものの、最近では「何を振られても完璧にやります」という思いから"何でも屋"を名乗り、ヨシモト、松竹芸能、サンミュージック、ケイダッシュステージなどのプロダクションで「お笑い講師」を担当しているといいます。

 「ヨシモトでは、自分で企画を出し、大学や、スタッフや構成作家を育成する『よしもとクリエイティブカレッジ』で、『会話術』という講義もやらせてもらっている。俺が培ってきた財産はこれなのだ。だからこそ、この仕事だけは続けていきたいと思っている。それが俺のスタンスである」(本書より)

 一見、芸人時代の迷いから解放されたように見えますが、「未だに迷子」だというユウキロックさん。「人間には死ぬまで出口はない」とその理由を語ります。人生の第二ステージで今、懸命に戦い続けているようです。

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