時には死者も? バンジージャンプの元ネタとなったバヌアツのある儀式

なるほど! ザ・民族図鑑
『なるほど! ザ・民族図鑑』
島崎 晋
宝島社
1,015円(税込)
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 結婚している女性が歯を黒く塗る化粧"お歯黒"。歯の白さが目立たなくなると、顔つきが柔和で色っぽく見えるということから、日本では古代から明治時代まで続いていました。

 いまの私たちの美しさの基準からは理解し難い、このお歯黒という文化は、中国南東部、東南アジアが起源だとされており、中国・雲南省やベトナム、ラオス、タイのいくつかの少数民族にも同様の風習が見られたそう。現在でも、ベトナム北西の山間部に居住する、ルー族の女性は、15〜16歳になると成人の証としてお歯黒をつけるのだといいます。

 島崎晋さんによる『なるほど! ザ・民族図鑑』では、世界中の民族を分類し、その特徴をわかりやすく解説。それぞれの民族独自の習慣や風俗なども紹介していきますが、そのなかには、馴染みがないと少し驚いてしまうような習慣も。

 たとえば、エチオピアの南西部を流れるオモ川の流域に暮らしているムルシ族。このムルシ族では、結婚適齢期となった15〜16歳以上の女性は、下唇に切れ目を入れて穴を空け、土器でつくったリップ・プレート(皿)である"デヴィニヤ"をはめ込むそう。
デヴィニヤは大きいほど美しいとされ、さらには結婚相手からもらえる結納の牛の頭数を左右するため、少しずつ大きなものにかえていくのが通例。既婚女性は顔と同じくらいのサイズをつけていることも珍しくないそうです。

 いまや世界中で楽しまれているアトラクションのひとつ、バンジージャンプも、元々は南太平洋の島国バヌアツ共和国のペンテコスト島で行われてきた成人の儀式。一人前の大人としてふさわしい勇気を持っているかを試す成人の儀式"ナゴール"として現在も行われているそう。

 ヤムイモの収穫期にあたる4月から5月に、仲間たちの歌や踊りにあわせ、ヤムイモのつるを足首に結びつけ、地上約20〜30メートルの高さに組まれたやぐらから地上に飛び降りるのだといいます。ヤムイモのつるにゴムのような弾力性はなく、また落下地点にも安全対策がなされていないため、ナゴールには怪我はつきもの。つるが短すぎて足首を痛めたり、やぐらに激突したり、ときには地面に叩きつけられて亡くなることもあるのだそうです。

 本書にはその他にも、顔を串刺しにする菜食主義祭りや、毒アリを使う壮絶な成人儀式、やけどを承知で火の玉を投げ合う祭りなど、衝撃的な習慣も紹介。民族による違い、その奥深さを実感できるはずです。

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