『おおかみこどもの雨と雪』が描く、母子家庭の貧困とは

ルポ 母子家庭 (ちくま新書)
『ルポ 母子家庭 (ちくま新書)』
小林 美希
筑摩書房
886円(税込)
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 本日、7月10日、日本テレビ系列『金曜ロードSHOW!』にて、細田守監督作品『おおかみこどもの雨と雪』(2012年公開)が放送されます。

 同作は、主人公の女子大生・花が、ニホンオオカミの末裔「おおかみおとこ」と出会ったことから始まります。やがて2人は一緒に暮らし始め、女の子の「雪」と、男の子の「雨」が誕生。しかし、雨の誕生直後に、おおかみおとこが急死。出産のために大学を休学し、アルバイトも辞め、おおかみおとこの貯金で生活してきた花は、2人の幼い子どもを抱え、経済的にも困窮。人間と狼の間を揺れ動く「おおかみこども」姉弟を育てるため、山奥に移住し自給自足の暮らしを始めますが......というストーリー。

 映画公開当時の感想では、"学生の立場で無計画に子どもを作るなんて、あまりにも無責任"という批判の声も少なくなかったそうですが、同作では、「経済的な貧困」はもちろん、「関係性の貧困」という、「母子家庭の貧困」の一面が描かれているのも見逃せません。

 母子家庭をめぐる過酷な実像に迫った『ルポ母子家庭』では、「勝手に離婚してシングルマザーになったのだから自己責任だ」とみなされる社会の風潮や、雇用環境の厳しさを訴えています。

 たとえば、同書に登場する54歳の女性は、20歳のときの初産の際、産院にかかる経済力がかったため、誰の介助もなしに、自力で分娩。その後、夫が失踪し、25歳でやむなくシングルマザーになります。トリプルワークをこなし、必死に働いて2人の子どもを成人させますが、33歳の息子と、30歳の娘も非正規雇用で、母子ともにワーキングプアの状況にあると言います。若者すら安定した職業に就くことが困難な社会で、ましてやシングルマザーが正社員の仕事を得ることの困難さが伝わってきます。

「妊娠解雇」、いわゆるマタニティ・ハラスメントが問題化していますが、実際に、第一子の出産を機に6~7割の女性が離職を余儀なくされ、幼い子どもがいる女性は、フルタイムで働くのが難しいなど、再就職へのハードルが高くなっています。

 同書では、現在の厳しい雇用情勢では、仮に共働きの家庭であっても、夫婦どちらかの収入が極端にカットされるなど、誰しも収入が不安定になるリスクを抱えており、「たとえ母子家庭でなくても、少ない収入で子どもを育てなければならない可能性はある。母子家庭の困難な状況は、現在の子育て期の抱える問題と重なる」(同書より)と指摘しています。

 母子家庭として人生を再出発するシングルマザーは、120万人以上にも上り、今後も増え続けていることが予想されますが、同書では、決して他人ごとではない、母子家庭のリアルな現実が描かれています。

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