インドのIT産業発展の一因はカースト制度にあった?

「いま」の日本が知っておくべき アジア情勢
『「いま」の日本が知っておくべき アジア情勢』
ワールドエコノミー研究会
PHP研究所
1,404円(税込)
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 2010年に、アメリカに次いで世界第2位の経済大国の座にのぼりつめた中国を筆頭に、インド、シンガポール、マレーシア、インドネシアと、めまぐるしい経済発展を遂げているアジア各国。世界経済の中心がアジアへと移行しつつある状況を前に、最新のアジア情勢はしっかりとおさえておきたいものです。

 書籍『「いま」の日本が知っておくべき アジア情勢』では、最新のデータに基づき、経済・軍事・政治・外交に渡るアジアの情勢がわかりやすく解説されていきます。

 本書で示される、アジアのそれぞれの国が直面している問題と、これからの可能性。たとえば、このままのペースで経済成長を続けると、2020年にはアメリカを抜いて世界一の経済大国になるともいわれている中国にも、現状、大きな不安要素が浮上してきています。安価で豊富な労働力を求め、多くの外国企業が工場を設立、生産拠点としたこともあり、高成長を遂げた中国ですが、ここ数年で、その外国企業の中国撤退ブームが起こっているのです。

 その原因のひとつは、中国の事業環境が外国企業に不利益をもたらす「チャイナリスク」の存在。経済成長とともに中国人労働者の人件費が右肩上がりで上昇し、平均賃金は10年間で4倍以上に。あるいは長年続いた一人っ子政策の影響により、若年労働者も減少。不透明で複雑な行政手続きの壁、とくに日系企業に関しては、尖閣問題などの政治的な軋轢が反日抗議運動となり被害にあうことも。

 こうした数々のチャイナリスクを回避しようとし、現在、起こっている外国企業の中国撤退ブーム。そして、その回避先として外国企業が目を向けているのが、東南アジアになっているといいます。

 安価で豊富な労働力、2020年までに6000万人の人口増加の見込み、インドシナ半島の経済回廊をはじめとするインフラ整備の進展(さらに日系企業にとっては、対日感情も良好で日本製品が支持されているといったメリットもあり)、世界の工場の潮流は、中国から東南アジアへという変化のときを迎えているのだといいます。

 また2050年には、こうした中国を追い抜く経済大国になると予測されているのがインド。

 インドに暮らす約8割の人々は、現在もカースト制度の縛りのもとで生きることを強いられていますが、本書はこのカースト制度が、皮肉にもインドのIT産業発展の一因ともなっていると指摘。

「IT産業はカーストによる職分類という枠組みからはみ出した職業で、階級に関係なく純粋に能力だけが求められる。この新しい職業に被差別カーストの若者たちが飛びついたことが、インドをIT大国へと押し上げた原動力のひとつになったといわれる」(本書より)

 いま注目すべき最新のアジア情勢。本書にて、そのポイントをおさえてみてはいかがでしょうか。

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