子育てにおいて父親は存在意義がない......なんてことはない!

父という病 (一般書)
『父という病 (一般書)』
岡田 尊司
ポプラ社
1,512円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS

「改正育児・介護休業法」の施行や、「こども手当」の支給もはじまり、近年、育児への意識が強まりつつあります。また、「イクメンプロジェクト」としてスタートした厚生労働省の施策は、すっかり市民権を得ており、実際、父親の育児への関与も増加傾向にあります。

 しかし、世の中の空気感から、"なんとなく"育児に参加している男性もいるのではないでしょうか。もしくは、奥さんの顔色を見ているとやらざるを得ないという家庭もあるでしょう。

 そもそも、父親と母親では、子どもに与える影響が異なります。ここは一つ、書籍『父という病』を参考に、父親の影響力について考えてみましょう。

 同書ではまず大前提として、「母親役の存在がいなければ、子どもはまともに育たないどころか、成長さえも止まってしまい、生命さえも危険になるということは、夥しいデータが裏付けた揺るぎない事実だ」と母親の大切さを指摘します。

 父親の存在よりも、母親の存在の方が重要であり、その愛着があるかないかで、子どものその後の対人関係を左右するといった研究結果もあるようです。子どもにとってまず大切なのは母親の存在。男性の皆さんもここは納得のできるものではないでしょうか。

 平成22年の統計によると、18歳未満の子どもがいる世帯約1200万世帯のうち、母親と子どもだけで暮らす世帯は、111万世帯。逆に父子だけで暮らす世帯は12万世帯余りと、10倍近い数字の開きがあるのです。同書では、「この十倍近い数字の開きは、子どもにとっての、父親と母親の必要度の違いを表しているとも言えるだろう。父親の必要度は、母親の十分の一というのが、現状が示す冷厳な評価なのかもしれない」としています。

 とはいえ、全く父親の存在が意味をなしていないわけではありません。同書ではある研究を紹介。それによると、子どもの時期に父親と離別してしまった子どもは、そうでない子どもと比較して、自己評価が低く、父親に拒絶されたと感じやすいとのこと。

「自己評価の低さや、本来頼ってもいい存在に頼れないという思いは、対人関係のもち方や安心感に当然影響するだろう。過度に気を遣ったり、逆に求めすぎて、ぎくしゃくした関係になりやすい。父親を失ったり、父親不在の状況で育った青年では、うつや自殺企図、薬物やアルコール依存、十代の妊娠、家出、学業からのドロップアウト、心身症、精神障害などのリスクが上がる」(同書より)

 動物の本能として、子どもにとって母親は欠かせない存在となりますが、父親がいることで成長時のリスクが軽減されるというのです。

 慣れない育児にへこたれそうな全国の父親も、こうした研究結果を知ると勇気が出るのではないでしょうか。父親の影響力は少なくないもの。どんなに奥さんから罵倒されようとも、くじけないで育児に参加しましょう。

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム